文化祭の前日に差し掛かった今日
カフェをやる私達のクラスは飾り付けなどの準備に追われる
絵が上手だという理由でポスターを描くことになり教室の隅で黙々と作業を進める
それでもしっかり聞こえる大好きな人の名前
「永瀬くーん、一緒に買い出し行こうよぉ〜」
手を動かしているものの意識はそっちの方へ
『面倒くさいってぇー』
「なんでぇ〜?永瀬くんなんにもやってないじゃーん」
永瀬と付き合い始めてから徐々に積もる嫉妬心と独占欲。
これ以上見たくない、聞きたくないとポスターに意識を戻す
教室からいなくなった2人
あーあ、行っちゃったんだ
私は大きな溜息を吐いた
16時前ぞろぞろと帰る準備を始めるクラスメイト達
、
人がいなくなり声をかけてきた
私の正面に座ってポスターを見る永瀬
絵に集中してるフリをして永瀬の顔を1度も見ない私は自然と声のトーンも低くなる
永瀬は気づいてるんだか気づいてないんだかなにも触れてこない
頭の上から聞こえてくる永瀬の明るいに声が妙に腹立つ
できるだけ顔に出さないようにと思っても出てしまうようで
下を向いて絵を描いている私を覗き込むように見てくる
ごめんね永瀬。こんな面倒くさくて
心の中では謝れるのに素直になれない面倒くさい私
よし、出来た!
ふと顔をあげるとずっと放置していた永瀬が目に映る
寝てる
うねうねの軽くセットされた髪の毛も
長くて綺麗なまつ毛も
スッと筋の通った鼻も柔らかい唇も
全部全部
ポスターを見ながら聞いてくる永瀬
ねくすと
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!