秋から冬に変わる頃の放課後、志帆は学校に残って勉強をしていた。
1度は帰宅したが、そこで教科書やノートを忘れたことに気づき、テスト間近で必要だったので、自転車で40分ぐらいの距離の学校まで戻った。
机の中にあるはずの教科書が見当たらず志帆が焦っていると、見周りの教師が来たが、何故か気付かれずに素通りされてしまった。
まるで志帆が見えないかのように。
余裕のない志帆は不思議に思いながらも必死に探し、置いた覚えのない教卓の中から発見した。
どうしてそんな場所にあったのか疑問に思うが今はそれどころではない。
急いで階段を降りるが、遠くからドアを閉める音と鍵の掛かった音を耳にする。
ほんの少し前まで生徒も教師の声が聞こえていたのに、不自然に誰もいなくなってしまい学校に閉じこめられてしまった。
セキュリティを守りつつ脱出出来ないかと日が暮れて暗い校舎の中を歩き回ったが、解決策を見いだせなかった志帆は心細さから、他校ではあるが心霊現象についての話し相手である真紘に連絡をした。
志帆は真紘とのやりとりを中断し、玄関口へと向かった。
~ 後 編 に 続 く ~
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!