第2話

出会い
17
2021/01/31 12:13
扉を開けるとそこには、1人の人間(?)がいた。
この部屋は応接室のようだ。

「!いらっしゃい。久々のお客様だ。」
ズイッと顔を近づけられる。
顔というか、この人は仮面のような物をつけていて
羽がついた独特な服、真っ黒なシルクハットを被っている。
まるで本で見た悪魔みたいだった。

「いやぁーちょうど閑古鳥が鳴いていてねぇ…。
 おや、驚いたかい?このマスクのことは気にするな!ただの趣味だからね。」

これはやばいのでは。変な汗が出てくる。
「お、お邪魔しまし…!?」
ガシッと腕を掴まれた。
「ああ、待ってくれ。何も理由もなしに此処に来てないだろ。」
「い、や…そのぉ…」
力強いなぁこの人。仮面の下の表情はわからない。
「大丈夫だから。ささ。座って。」
ほぼ無理矢理座らされた。
アンティークな家具ばかり。高そうだ。

「なぜ此処に来たんだい?」
「えっー、と。チラシを見て…。」
と拾ったチラシを出す。
「なるほど。じゃあ、何かご依頼で?」
「それが…何も…。」
「あー、興味的な感じ…?」相手は落胆している様だ。
「はい…何かすいません」
「んまーでもこんな街から辺鄙な店に来てくれるなんてね。
どうせならゆっくりしていってよ。」
「は、はぁ…。」
ゆっくりできるものか…。
うーん、一応ここは何でも屋だろ。
なんでもなら…知っていてもおかしくないか。
「あの…」
「なんだい?」
相手はお茶を沸かしている。
無言のままここにいるのはなんだか気まずい。
自分が話題にできるもの…。
相手も知ってそうな事。
思い切って話してみることにした。

「“悪魔”とかって、信じますか…?」
空気が張り詰めた。
「ほぉ…君は信じてるの?」
質問を質問で返してきた。
「え。あぁ、まぁ…」
「根拠は?」
「根拠ですか…たまに見えるんです。悪魔じゃないかもだけど。」
「なるほど…」
興味深そうに聞き入ってくる。
「家に1人いるんです。小さいけど。」
「そういう家系なのかい?(普通の人間には見えないはずなんだが…)」
「いや、両親に言っても頭がおかしいと言われました。」
「そういう話に興味は?」
「あります。よく本とかテレビとかで。」
「稀な例だけど…信じてると実際に見えてくるって話…。
 あるのかもね。」
「それは…」
「おそらく信じる心が“あちら側”の境界線を無くしたんだろう。」
「あれは幻覚じゃないんですか!?」
「はははっ、残念ながら存在するんだよ、悪魔は。」
いる?いるのか。
僕が見たものは嘘ではないんだ…!
半信半疑で聞いたものの相手はよく知っている口振りだ。
“知ってそう“という単純な偏見からここまで辿り着くとは。
いってみるものだなと思った。

「信じる。簡単な事だと思うだろ?しかし、所詮人間だ。
 臆病な生き物であるから信じようとしない。恐いからだ。
 君はその中の例外の一つだ。そして私に会ったのは運命…」
とつらつらと言葉が流れてくる。
難しい話はよくわからないが、信じると言う“力”が僕を変えてしまったらしい。
「運命って…?」
「君が私に出会えたことだ。そして私が君を引き寄せたことだ。」
「?」
「悪魔は人に憑くだろう?」
「はい。人への危害が殆どです。」
「私は“共存”している。」
「えっと…?」
「契約していると言うか、そう言う家系だ。
 我が一族は古代の悪魔共を封印している書物の管理人なんだ。」
「今までの悪魔の伝説や事件は本物?」
「イエス。その通り。フィクションはノンフィクションだったんだよ。
証拠は私にある。」
「…」
空いた口が塞がらない。
今まで散々馬鹿にされて来た出来事は本当だったのか。
こんな場所で嘘でした〜なんて言われることはないだろう。
しかし、まだ会ったばかりの相手。
素直に信じ込むのは良くない。
心とは裏腹に更に沸々と好奇心が湧く。
「疑っているね?じゃあ、私に触って見てくれないか?」
「はぇ?」
何言ってるんだ。断ろうとするものの…。
「ほらほら手を出して。」
無意識に手を出している。体は正直だ。
単なる興味で動いている。
触ろうとするとスゥっと、手は向こうへ通り抜けた。
相手の体は煙のようだった。
「ぇ、嘘だ。」
「面白いだろ。」
「ゆ、幽霊!?」
「ふはは、君面白いね。悪魔とか言ったり幽霊とか言ったり」
「だって、さわれない…」
「悪魔の能力だ。私は“契約”した。だから力を持っている。」
「すごい…。」
「恐れないんだね。これを見た人間は大体震える。」
「僕も使えたりとかするんですか?」
「え、、まあ。できるよ。君には才能があるみたいだし。
でも目的を知りたいかな。契約してどうしたいんだ…?」

たしかに。これは浅はかな興味だ。単純な理由。気になるから。
「すいません…。特には…。」
「正解だよ。契約して世界に知らしめようとか、
 そう言う悪に使う思考じゃなくてよかったよ。そんなことほざいたら記憶消してた。」
シラっと恐ろしいことを言う。
僕が思っている以上にすごい人みたいだ。
失礼働かないようにしようと心に決める。
ゴーンゴーンと重い振り子時計が鳴る。
時刻は午後6:00を回っていた。
「子供はもう帰る時間だね。このことは内緒だよ。
 誰かに言ったら…君は死ぬ。」
息を呑んだ。冷たい空気が流れる。
「さっき私の煙、吸っただろう。少しでも口にしてみろ。
体中の血管が破裂、内出血で無惨に死ぬ。」
「わ、わかった。誰にも言わない。」
「ふふ、約束だよ。」
相手は微笑んだ気がした。
「あ、の。約束は絶対守るから、また…ここへ来てもいいですか?」
「ああもちろん!!君は特別だ!いつでもおいで。」
「ありがとうございます!では、!」
僕は家へ急いだ。
あまり遅い時間に帰ると両親が怒る。
重たい本と、チラシが入った鞄をぶら下げて走る。

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「不思議な子だったなぁ。。」
茶を嗜みながら呟く。

すると、キィィ…と扉は音を立てた。
「失礼します。今日の仕事は終わりです。」
「ご苦労。」
「あのガキ、どうしてここにこれたんでしょうか。」
「それがね、面白いことに私が見えるんだ。」
「え…それって…」
「ああ、悪魔祓いの血筋の可能性がある。」
「何を冗談言ってるんですか、数十年前に滅びたって話じゃ?」
「そうだ。古代悪魔共が皆殺した。」
「でもなんで」
「…奇跡的に生き残ったみたいだな。」
「潰します…?」
「いや、味方につける。重要な戦力だ。今後役に立つ駒になるさ。」
「……俺は反対します。人間はすぐ裏切る。」
「ははは君も人間だよ。」
「もう捨てました。」
「まぁ、この話は保留だ。飯食べるぞぉ〜」
「はぁ…面倒なことになりそうだ。」


キィィ…。
2人は暗闇に消えてった。

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続く

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