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第8話

儀式だってさ。
17
2021/02/09 10:02
不安が走る。
「え、耐えるって?」
『簡単ではないと言っただろう。』
「でも相性良さそうだからすぐに順応できるよ。多分。」
「そ、そんな軽々言わないでくださいよ…」
二人は何か知っているよう。
僕は知らない何かに怯えている。
耐えるってなんだろう…。昔から痛いのは嫌いだ。
そういうのだったらどうしよう。
「ま、やるしかないからね。心の準備は?」
『いつでも構わない。』
「え、え、ちょ。詳しく説明してくださいよ!」
「えぇー。難しいんだよね説明。」
「いや困ります。それでも頼む人の態度ですか。」
「えっとね、簡単に耐えるとは
体に呪文やらなんやら契約が刻まれるんだけどそれに耐える。
痛い。苦しい。とかは人それぞれ。もしかしたらね!
なんもないかもだけど、稀に順応できないことがある。」
「えぇ。。やだ。。できないとどうなるんですか?」

しばらくの沈黙の間聞こえてきた言葉は…
「死ぬ。」
「え?」
デジャヴ。また死ぬのか僕は。
「取り込む悪魔さんの強さによるんだけど、ここにいるのは大体強いから
体が耐えきれなくて死んじゃう時がある。」
『四肢が消し飛ぶな。』
「いやいやいや物騒な。本気でいやです。本気と書いてまじと読む!」
「焦るな。君は悪魔祓いの家系だから死ぬことはないよ。うん。」
『わしが死ぬかもな。』
「ぇ?なんで。」
『お前は“悪魔祓い“わしは“悪魔“。
お前が耐えきれないんじゃなくて、わしが耐えられんかもしれん。』
「だから確認してたんだよ。」
「なるほど…じゃあ、もし合わなかったら悪魔さんが死ぬ…の?」
『そうなるな。』
「いいの…?もしかしたら、死ぬのかもしれないのに。」
『なーに。100年以上も生きてたら飽きるわ。
また封印されるくらいならとっとと死にたい。誰も悲しまん。』
「そんなこと言わないでよ。私が悲しむ。」
『たまにしか呼び出さねぇくせによぉ。良く言うぜ。』
はぁ。と悪魔は呆れ顔。あれ、段々はっきり見えてきている。

「さぁ!やるよ!覚悟はおあり?」
「は、はい…!」
「アイト君はじゃあそこに立って、悪魔さんよろしく。」
『手短にな。』
そういうと、古代の悪魔は自分で手の平を切り裂いて血を流した。
流した血をグラスのような物に注いでいる。
赤ワインみたいだなとか不謹慎だが思った。
「なんで…血を…。」
「契約方法は違いの血を混ぜて、それをどちらかが飲む。」
「うぇ…」
『ガキ。早くしろ。』
「僕も血を…!?」
「ああ。少しで良いんだ。悪魔君ほどいらない。」
『手を出せガキ。そんなに怯えるな。一瞬だ。』
無意識に体が震えていく。
痛いのは嫌いだ。でもこの世界では痛いとか苦しいとか
そんなの気にしてる場合じゃない。
覚悟を決めろ。頑張れ。頑張れ自分。
「わかった。」
手を差し出した。
『目を瞑っていろ。』
ギュッと目を閉じた。
早く終われ。早く終われ。と念じる。
尖った何かが手をあたった。生暖かい液が手から滴る。
血だ。
気を手放しそうになる。
『おいガキ。目を開けろ。』
「終わった…?」
『ああ。しばらく痛むが我慢せい。』
「ありがとう…?」
手を見ると包帯が巻かれていた。血はもう止まっている。
本当に一瞬だった。
「じゃあ、どっちが飲む?」
『聞く必要あるのか?普通人間の方だ。』
「の、飲みますよ。」
「どんなものがくるかわからないけど、痛いかもだし。」
「でも普通、僕なんでしょ?」
『まぁ…契約条件的にはわしが飲んでも構わん。』
「普通、人間が呑んで力を手にするんだけど、契約内容が“全て捧げる“だから
それが対象が二人ともなんだよね。だからどっちが飲んでも君は力から何まで得られるよ。」
「じゃあ……お願いしても…………」
『臆病だなぁ。まぁ構わん。わしが優しくて良かったな』
「でもこの痛み経験しないと今後面倒だよ…?」
『確かになぁ。』
「オグルさん……!」
『まぁ、これ以上の痛みなんてあと100回ぐらい経験するだろ。
あと手を少し切るだけでこんなに震えてるんだ。呑んだらショック死だろうよ。』
「え」
「それもそうだね!!じゃあ召し上がれ♪」
『じゃあガキ。その聖杯を渡せ。』
「すいません…臆病者で…」
『謝罪なんぞ聞き飽きた。』
悪魔はグイッとすぐに飲み干した。
「おぉ、良い飲みっぷりで。」
「そ、そんなこと言ってる場合ですか!?」
『…ヴッアァ』
苦しそうに喘ぐ。床に蹲ってしまった。
苦痛に顔を歪める。
「大丈夫ですか! ッ…!?」
自分の身にも何か起きたようだ。
ドクン。心臓の波打つ音が体に渡る。
僕は得体の知れないものに脅える。

「んーまぁ。飲まないって言っても刻まれるから苦しいっちゃ苦しいか。」
「は、は、やく言ってください」
ただ、心臓の鼓動がガンガン響く。

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