事の始まりは簡単で。
華金だからと会社のみんなで飲み会をしていた。
たくさん飲んだから酔いが回るのが早くて、
気づいたら酔っ払っていて、終電を逃していた。
もちろん、飲みに行くことは彼氏のジェヒョンには連絡済み。
ジェヒョンからも楽しんでと明るい返事が返ってきた。
私たちももう大人だから、大学生や高校生みたいに飲みに行くことを縛ったりはしない。
ここまではいつものこと。
でもその後が事件で。
終電を逃したことに気づいた私はジェヒョンにバレないように
車で来てる同期に送ってもらうようにお願いして家まで帰ってきたのだ。
連絡なしに。
しかも男の同期に。
そう。
前にも同じことをやらかしてしまっているのだ。
理由は簡単で。
単純に心配をかけたくないから。
終電を逃したなんて言ったらきっとジェヒョンは仕事で疲れているだろうに飛んできて
寝不足で仕事に行くことになる。
ただでさえ私の何倍も忙しいのに
私なんかのせいでジェヒョンの大事な睡眠時間を奪いたくない。
前にも同じ喧嘩をしたのに、
前と同じ考えが頭に浮かんできて
安易に動いてしまったのだ。
ジェヒョンの声は冷たい。
いつもの温かいジェヒョンの姿は一切ない。
冷え切っていて、蔑むような目
胸に深く突き刺さってくる。
ただジェヒョンを想って、ジェヒョンが好きだから
それだけの一心なのに。
バレた理由は単純で
私の帰りが遅いことを心配したジェヒョンが家を出た瞬間と
私が家に着いた時間が同時だったのだ。
ジェヒョンの声がどんどんと深くなるにつれて
どんどん自分の心が追いやられていく。
私がいなければジェヒョンは苦しむこともなく
幸せに生きていけるのかな?
そんな考えまで浮かんでくる。
その考えと同時に自分の目から涙が出てくるのもわかる。
泣いたって何も変わらないってわかってるのに。
そう言って寝室に入っていくジェヒョン。
かれこれ1時間ぐらい私はまたジェヒョンの大事な睡眠時間を奪ってしまった。
きっと、私はジェヒョンといない方が、って考えが沸々と湧いてくる。
jaehyun side
怒りすぎてしまったという自覚はある。
ただ大切だから心配で、
誰かに取られてしまうのが怖くて
口にしたくない言葉がポロポロと出てきてしまう。
情けない男だ。
謝ろう、言い過ぎだって。
寝返りを打ってみると、いつもは隣にいるはずのあなたの姿がない。
嫌な予感がした。
寝室を出て、部屋中を探してみてもあなたの姿はない。
やらかしてしまった、完全に。
大切で大好きという感情が溢れれば溢れるほど
自分だけのものにしたい、俺だけを見て欲しいという感情が強くなってくる。
自分のそんな汚い感情は、俺だけの中で留められればいいのに。
どうしてもあなたを目の前にすると、出てきてしまう。
こんな俺に嫌気が刺すのも当たり前だ。
スマホと財布だけ持って部屋を飛び出す。
幸いあなたが行きそうな場所には心当たりがある。
連絡を入れてみても、もちろん返信はない。
あなたは嫌なことがあると、スマホを遮断する癖があるからだ。
ポッケに突っ込んだスマホが震える。
「もしかしたら」という思いでスマホを見ればそこにはテサンの名前があった。
you side
こんな時、負の感情しか湧かなくなってしまう自分に腹が立つ。
ジェヒョンはそんな人じゃないのに
「明日起きたら振られちゃうのかな」とか「もう嫌いなのかな」とか
そういう妄想ばかりが頭を駆け巡る。
私が100%悪いのに。
あの時、しっかり連絡すればそれで解決できたのに。
戻らない時間を悔やんで、後悔しては、また涙が流れてくる。
泣いたって、ジェヒョンの気持ちが変わるわけでもないのに。
ベンチに座ってぼーっとしていると
聞き馴染みのある大好きな声が後ろから聞こえてくる。
私ついに幻聴聞こえるようになったんだ。
好きで好きで大好きすぎて...。
そう思いながらも振り返ると、
それは幻聴ではなく、現実であることが明確になった。
さっきとは違う、優しくて温かい声。
私の大好きなジェヒョンの声。
ジェヒョンは優しく私の頭を撫でてハグをしてくれる。
温かくて居心地が良い。
手を繋いで、家まで帰る。
その帰り道、ジェヒョンは私のことがどれだけ大切なのかを熱弁してきた。
そんなジェヒョンが愛おしくて、ずっとそばにいたくて...。
大好きでたまらない。
ちなみに後日、ハグしているところを後輩のテサンくんに見られて、いじられたらしく拗ねていた。
end















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!