7月23日午後4時41分。
圭介達3人は神志山駅の前に呆然と立ち尽くしていた。
品川駅からここ神志山駅まで約6時間。ほぼ座っているだけではあったが、その疲労は計り知れないものであった。
セミの鳴き声も朝に比べて大人しくなり、束の間の涼しさを感じられた。
鳥羽が腕時計を見て呟く。
その直後、猛スピードで飛ばしたパトカーが3人の前に停車した。
爽やかな笑顔でパトカーの助手席から降りてきたのは、鳥羽よりもひとまわりは下と思われる刑事だった。
鳥羽はさっきのしかめっ面は何処へやらと言った感じの笑顔で刑事に応えた。
城ノ口はニカっと笑い、敬礼して見せた。
亜美は少し緊張した面持ちで軽く頭を下げた。
圭介は先程から気になっていた疑問を城ノ口に投げかけた。
城ノ口ははにかみながら、包帯が巻かれた右手を挙げた。
鳥羽が呆れ顔で城ノ口を見る。
城ノ口は顔を赤くして応えた。
城ノ口は後部座席の扉を開けると、3人を促した。
3人が乗り込んだのを確認して、ドアを閉めると、城ノ口は反対側に回り込み助手席に腰を下ろした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!