指を刺された城ノ口は慌てて内ポケットから警察手帳を取り出すと、それをみんなの前に提示した。
横で見ていた藤島が2人の間に割って入る。
圭介は洗面所でグラスに水を満タンに注ぐと、それを城ノ口の前に突き出した。
亜美が不安そうに圭介に視線を向ける。
城ノ口は観念したかのように圭介からグラスを左手で受け取った。
『パリン』
次の瞬間城ノ口の左手からグラスがまるで滑るように床に落ちた。
床は水に濡れ、大きなガラスの破片がその場に散らばった。
圭介は予想通りの反応にほっと胸を撫で下ろした。
静かに一連の流れを見ていた鳥羽が驚きの声をあげる。
圭介が答える。
藤島が眼鏡をクイッと上げて圭介の顔を覗き込む。
城ノ口が隙を見て反論する。
圭介は城ノ口の目を真っ直ぐ見つめた。
と鳥羽。
亜美が手を打つ。
圭介は額に汗を垂らした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!