第20話

第4章 クラスメイトのお嬢様 2
59
2020/07/18 07:35
部屋を出ると、扉のすぐ横でエレベーターを待っている2人を見つけた。
圭介
圭介
ったく、急に飛び出していくなよ。
圭介は鳥羽に先に行くという趣旨の連絡を入れると、冷めた目をスマホから2人に移した。
赤澤美琴
赤澤美琴
いいじゃん、いいじゃん!せっかくうちのホテルに泊まれるんだからもっと楽しまないと。
さっきの残念そうな表情はどこへやら。またいつもの笑顔で圭介に返す。

『チーン』
音が鳴ると、エレベーターが扉を開けた。

美琴は開いた扉から真っ先に乗り込むと、操作盤の1と書かれたボタンを押した。

押されたボタンはオレンジ色に淡く光り、3人は浮遊感に包まれた。
赤澤美琴
赤澤美琴
で、どうなの?夏休みの圭介とのデートの予定は?
美琴が小声で亜美に問いかける。

圭介にももちろん聞こえていたが、あえて聞こえていない風を装っていた。

圭介にとってその質問は気になるとものだったからである。
亜美
亜美
そんなの無いに決まってるじゃん。そういうの興味ないし。
と亜美。

嘘だ。頬を少し赤らめているその表情を見れば、女心に疎い圭介にでも容易に本心を見抜くことができた。
赤澤美琴
赤澤美琴
顔に嘘だって書いてあるよ。本当は圭介のこと大好きなクセに。
美琴がニヤニヤしながら亜美を肘でつつく。
亜美
亜美
いやいや、本当にそんなことないから。
口調はサバサバしていたが、頬の赤らみは顔全体に広がっていた。
赤澤美琴
赤澤美琴
へぇ、じゃああたし圭介にいい娘紹介しちゃおっかなぁ。
亜美
亜美
だめ!圭介は事件で忙しくて恋愛なんてしてる暇ないんだから。
もう言っていることが滅茶苦茶な亜美だが、圭介に好意があることを絶対に知られないように必死なのである。

『チーン』
エレベーターは再び音を鳴らし、扉を開けた。

1階のロビーには受付の人間が数名と大理石の丸いローテーブルを囲んで談笑している3人の人間がいた。

美琴は迷わずテーブルの前まで駆け寄ると、3人と何やら言葉を交わしこちらに向き直った。
赤澤美琴
赤澤美琴
紹介するね。こっちがクラスメイトの名張亜美で、こっちが高校生探偵の松本圭介。
圭介
圭介
はじめまして。
亜美
亜美
はじめまして。
紹介された2人は軽く挨拶する。
赤澤美琴
赤澤美琴
それで、こっちの3人が右から周防大吾さん、三井照之さん、藤島修斗さん。
三井照之
三井照之
こちらこそよろしく。
代表として三井が挨拶すると、3人はその場に立ち上がると、2人に笑顔を向けた。
赤澤美琴
赤澤美琴
さっき言った宝石を見つけたって人が真ん中の三井照之さん。今回の件で赤澤財閥から多額のボーナスも貰っちゃってんだよね。
三井照之
三井照之
そう言う言い方は良くないんじゃないの?俺は勉会長の指示通りに動いただけなんだから。
色黒でガタイのいいの三井は自慢のロングヘヤーをかき揚げ、美琴に笑みを向けた。
周防大吾
周防大吾
でもすごいよな。本当にあの伝説の宝石を発見しちまうんだから。
三井と同様に色黒ではあるが、体型がヒョロ長の周防は悔しそうに腕を組んだ。
藤島修斗
藤島修斗
本当本当。お前があの宝石を見つけてなけりゃ、今頃僕はタワマン住まいだったんだろうな。
2人とは違い、メガネをかけた色白の藤島も周防に同調する形で三井を睨んだ。

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