部屋を出ると、扉のすぐ横でエレベーターを待っている2人を見つけた。
圭介は鳥羽に先に行くという趣旨の連絡を入れると、冷めた目をスマホから2人に移した。
さっきの残念そうな表情はどこへやら。またいつもの笑顔で圭介に返す。
『チーン』
音が鳴ると、エレベーターが扉を開けた。
美琴は開いた扉から真っ先に乗り込むと、操作盤の1と書かれたボタンを押した。
押されたボタンはオレンジ色に淡く光り、3人は浮遊感に包まれた。
美琴が小声で亜美に問いかける。
圭介にももちろん聞こえていたが、あえて聞こえていない風を装っていた。
圭介にとってその質問は気になるとものだったからである。
と亜美。
嘘だ。頬を少し赤らめているその表情を見れば、女心に疎い圭介にでも容易に本心を見抜くことができた。
美琴がニヤニヤしながら亜美を肘でつつく。
口調はサバサバしていたが、頬の赤らみは顔全体に広がっていた。
もう言っていることが滅茶苦茶な亜美だが、圭介に好意があることを絶対に知られないように必死なのである。
『チーン』
エレベーターは再び音を鳴らし、扉を開けた。
1階のロビーには受付の人間が数名と大理石の丸いローテーブルを囲んで談笑している3人の人間がいた。
美琴は迷わずテーブルの前まで駆け寄ると、3人と何やら言葉を交わしこちらに向き直った。
紹介された2人は軽く挨拶する。
代表として三井が挨拶すると、3人はその場に立ち上がると、2人に笑顔を向けた。
色黒でガタイのいいの三井は自慢のロングヘヤーをかき揚げ、美琴に笑みを向けた。
三井と同様に色黒ではあるが、体型がヒョロ長の周防は悔しそうに腕を組んだ。
2人とは違い、メガネをかけた色白の藤島も周防に同調する形で三井を睨んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!