ヒヤはツツと共にホテル内の警備室にいた。
ツツ自慢の空手で数名の警備員を一気に制圧し、今は部屋の隅に猿轡を噛ませ、両手足を縛った状態で放置されている。
力だけが取り柄のツツは椅子に座って、ただ目の前に無数にあるモニターをボーッと眺めていた。
落ち着いた声色でヒヤが答える。
その直後、2人のポケットでスマホが通知音を鳴らした。
ヒヤは声色を明るくすると、スマホをポケットから取り出し、メッセージアプリを開いた。
『https://kaguchi .jp/』
例の如く、新着メッセージの青く表示されたURLをタップすると、スマホのディスプレイはウェブブラウザに切り替わり、炎の背景にポップアップが表示された。
『●●●●●●●●●』
パスワードを入力すると、さっきまで表示されていたポップアップが消え、炎の奥から人影が現れた。
言葉を失う2人をよそに、カグツチは紅い文字を並べ始めた。
黒い文字の報告が終わると、次はヒヤが報告を始める。
ヒヤも続いて報告を終えると、最後に緑色の文字が報告を始めた。
こちらが返事をする間もなく、炎の奥に人影は消えてしまった。
スマホをポケットにしまうと、ヒヤとツツはお互いに目を合わせた。
ヒヤが不安げな表情を浮かべる。
ツツはヒヤを抱くと、自分の胸に顔を埋めるヒヤの頭を優しく撫でた。
2人は互いに言葉を交わすと、唇と唇を重ねた。
ふと我に帰ったヒヤが顔を真っ赤にして部屋の隅を見る。
すっかり忘れていたが、この警備室には自由を奪われた数名の警備員がいたのだ。
ツツも赤面してヒヤに微笑みかけた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!