ここでは、時間が分からない。
彼女もどこにいるのかさえ分からない。
寂しい、でも、なんとなく
現実世界に戻るのは嫌。
ベッドに横たわる
色の無い生活
ああ、このまま
時間だけが過ぎていくのだろうか。
それとも、このまま揺蕩えば
楽なのかな、
代償に、過去が色褪せていくけど
あれ、過去って?
この生活に華を感じない僕は
過去はもっと幸せだったのかな。
なんで思い出せないんだろう
思い出そうとすると、
脳がそれを拒否して、真っ黒になる。
このまま、
この色のない世界で
このまま、
滴り、枯れて、散っていけば
そこに辿り着くの?
若井 side
嘘だと言って欲しかった。
俺は、急いで言われた病院に向かう。
病院の廊下で
手当をされ、包帯が巻かれた元貴を見つける。
俺を見た元貴の表情は
まさしく 無 だった。
元貴が首を横に振る
淡々と元貴が話す。
その目には光など無い。
俺は、元貴をキツく抱きしめる
元貴が大声を出して泣き喚く。
次の日、あなたの病室に
お見舞いに言った。
事故による怪我はあるものの、
ちゃんと息してるし、
手もあったかいし、
片手にあなたが好きなオレンジを持って
元貴が顔を出した。
元貴があなたに話しかける
が、返答はない。
泣きながら元貴が叫ぶ
いきなり元貴が倒れ込む
あれから三日経った。
二人とも起きる気配がない。
元貴に関しては、時々魘されている。
医師からは
彼女を失ったことによる総合失調症と
過労によるものだと言われた。
起きろよ、
お前まで居なくなんなよ…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。