第3話

もっと頑張れ。自分
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2018/03/17 05:15
《テオくんside》




テオくん
先来てたんだ、おはよ





スカイハウスに入るなり
ソファに座っているじんたんと言葉を交わす。





荷物を下ろして上着を脱ぎ、じんたんの横に座った。





鼻をかすめるじんたんの香り。





久しぶりで、思わず近くによってしまう。





この無意識の動作は
全部俺の " 意識 " に支配されているのだが。





その " 意識 " 。





それは世間では認められないもので
隠し通さなければいけないもの。




☆イニ☆
…テオくん?





なのに俺は、





その " 意識 " を変えられることなく





ずっとじんたんを想ってしまっている。




テオくん
また食べ物企画?





できれば長い時間一緒にいたくて
撮影時間をいつもより長くしてみたり





できればそばにいたくて、撮影部屋の
古くて狭いソファを新しい物に変えなかったり





できれば気づいて欲しくて
それらしい発言をしてみたり。





なんか俺、まるで乙女みたいじゃん。




☆イニ☆
だってテオくんと食べたいんだもん





その何気ない言葉だって





" じんたん " というベクトルに





俺が傾いてしまうファクターのひとつなんだよ。





伝えたい、





伝えられない。




テオくん
…疲れた、





思わず口をついて出た言葉。




☆イニ☆
最近よく疲れたって言うね?





大丈夫?と聞かれる。





確かにそうかもしれない。





" 意識 " が " 無意識 " に。





まだ出会った頃は





走り回って馬鹿みたいに笑ってただけで





それだけで幸せだったのに。





それに満足出来なくなってしまった理由が
分からなかったのもきっと
大人になりすぎてしまったからで。





大人ってそんな簡単な問題すら解けないっけ。





もう前みたいに踊るような毎日は送れない。





時間は戻せない。





じんたんに出会わなければ、





何回そう思っただろうか。





でも、思い出 " メモリー " は消せない。





じんたんがなにかに落ち込んだ時、





" じんたんはひとりじゃないから、"





って言って励ましたりしたけど。





今この状況になったら
もう俺だって人のこと言えないじゃないか。





俺自身、そばにいてあげられてないんだから。





でもせめて会えている時間だけでも
楽にしてあげられたらなって。





俺はじんたんのこと、想いすぎている。





" 会える? "





そうじんたんから連絡が来た時
ちょうど仕事が入っていて会えなかった。





忙しいのはじんたんと一緒がいいなんて。





一人で忙しい気持ちになって
じんたんのことが気がかりで落ち着かなくて。





後に何かが迫ってきているのにも気づかず
ただ俺はじんたんに想いを伝えることだけを考える。





なぁ、神様。





もしいるなら、





見守ってないでさ。





いざと言う時なんだから





背中ぐらい押してくれよ。





この1歩を踏み出せば幸せになるよ、
そう言ってくれるだけでもいいからさ。





もし最悪な結果になっても
今のうちに後悔しない生き方した方がいいのかな。




テオくん
ちょっと出てくる、待ってて





その言葉と共にじんたんを部屋に置いて
雲ひとつない空の下に出た。





そしてその空を見上げる。





できるだけ精一杯に手を伸ばして、





だけどでも、届かないのは当たり前で。





" 当たり前 " じゃないことに
挑戦するのはそんなにおかしいことか?





空に手を伸ばすように





じんたんに手を伸ばしてみても





いいのかもしれない。





そう考えると





嫌な気持ちや重い足取りだって





軽くなった気がした。





俺の心を、青色が満たす。





俺はまだまだ歩けるんだから。





涙で滲んだ先でもどこへでも。





次に空を見上げる時は
背負うものが軽くなった時。





そう心に決めて。





下ばっか向いてないで、





今までの自分に、負けないように。





そうすればきっと、笑えるから。




テオくん
お待たせ、撮ろ!





もっと頑張れ。自分 / スカイピース

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