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第12話

一致
685
2018/05/20 02:53
《テオくんside》




☆イニ☆
..ごめんテオくん、





服汚しちゃった、と
焦点が合っていない目をこちらに向けるじんたん。





あどけなさを感じるその顔の割に
背負っているものが多すぎると感じた。





ただ抱きしめて
背中を撫でてやることしか出来ない自分に
嫌悪感を抱く。




☆イニ☆
リュックのお茶とってほしい





そう言われ、じんたんのリュックに手をかける。





目当てのものをとった時、チラッと見えたもの。




テオくん
..なんだこれ





じんたんの目が見えないことをいいことに
お茶を渡した後、その物体を手に取る。





" 幸せ " と書いてある絵本だった。





作者などは書いていない。





表紙に描いてある絵の感じからして
素人が書いた絵本だと解釈した。





もともと絵本が好きだったからか
無意識に表紙をめくる。





だけどこの目に入ってきた内容は
信じられないものだった。





今じんたんの身に起こっていることと
ありえないぐらい類似しているのだ。





そして登場人物の名前に惹かれる。





" エメ "





" トレゾア "





" アモール "





" ルミエール "





どこかの歌でも聞いたことがある単語だ。





意味はわからない。





でも俺の " 勘 " が
その意味の中に、また新しい " 意義 " があるという。





ポケットに入っていたiPhoneを取り出し
すぐさまSafariを開いた。





" エメ 日本語訳 " と打って検索する。





どうやらこれはフランス語らしかった。





" トレゾア "

" アモール "

" ルミエール "

についてもすべて調べた。





そして分かった気がした。





" エメ "

それは " 愛 " を表すもの。





この世界でいえば
俺とじんたんが結ばれたことと考えると辻褄が合う。





" トレゾア "

宝物。





じんたんのお父さんのことだろう。





" アモール "

愛する人。





これはきっとじんたんのお母さんのこと。





" ルミエール "

光。





じんたんの目から光が奪われたこと。





叶ってはいけない恋だったのだ、所詮。





俺とじんたんの、2人だけの恋は。





この恋が引き金となって
この絵本の通りになってしまったのだ。





これは避けることが出来ない現象だった。





" 運命 " と言ったらいいのだろうか。





誰のせいでもない。





だからこそこんなにモヤモヤして。





そうかと言って
今更じんたんを1人に出来るわけではない。





この恋がこの結果を招いたのなら
守り抜いてやらなきゃいけない、俺が。





" ペルドル "





その単語は調べたくなかった。





意味を知ってしまったらもうそこまでな気がして。





正々堂々と、運命に立ち向かってやるから。





根拠の無い、そしてその根本すらない、
筒抜けの " 自信 " だけを抱いて。





これから起こることさえも分からず。

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