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第7話

7話 俺じゃ、力になってやれないか?
笹葉 拓
笹葉 拓
……! 笑ったな
うれしそうに、にっと白い歯をこぼす。
あなた

はい、笑っちゃいました

あなた

(ほんと、先輩の音は楽しい音だな)

あなた

(憎らしいくらいまっさらな
拓先輩といると、自分の汚れが
浮き彫りになるようで怖かった)

あなた

(だけど、同時に……救われもする)

私は拓先輩の隣に座り、
下手くそなキラキラ星を一緒に弾く。

──♪~♪~♪~
笹葉 拓
笹葉 拓
お、急にキラキラ星が
プロっぽくなった!
すげえ、気持ちいいな!
あなた

プロっぽくって……ふふっ

あなた

(ああ、楽しい。先輩の音に合わせて、
私の音も弾んでるのがわかる)

心が軽くなって、
音色がキラキラと輝きだすのが
わかった。
あなた

(嘘……あんなに無機質だった音が……。
拓先輩といるだけで、
簡単に色をつけた……?)

驚いて手を止めると、
不思議に思ったのか、
拓先輩も演奏をやめる。
笹葉 拓
笹葉 拓
飽きた?
あなた

あ、いえ……そうじゃなくて

人差し指で、ポーンッと鍵盤を鳴らす。
あなた

(あ、やっぱり。
前より音が生き生きしてる。
すごいな、先輩は……)

あなた

先輩

笹葉 拓
笹葉 拓
……?
あなた

ほんと、ありがとうございます

笑顔を向ければ、拓先輩は目を見張った。

それから手を伸ばしてくると、
私の頬を拭う。
あなた

先輩?

笹葉 拓
笹葉 拓
泣いてる。
自分で気づいてないのか?
言われて初めて、自分の目から
涙がはらはらと流れているのに気づいた。
笹葉 拓
笹葉 拓
……俺じゃ、力になってやれないか?
あなた

…………

笹葉 拓
笹葉 拓
俺に踏み込まれるの
嫌かもしれないけど、あなたのピアノ、
いつも泣き出しそうな音出してた
笹葉 拓
笹葉 拓
でも、本人はケロッとしてるから、
余計に心配になんだよ
笹葉 拓
笹葉 拓
誰にも気づかれないように、
ひとりでなにかに傷ついて
んじゃないかって
拓先輩の言葉が傷口に優しく染みこんで
癒そうとしてくれている。

その居心地のよさに、
私は背中を押されたのだと思う。
あなた

お母さん、死んだの

観念して打ち明ければ、
拓先輩は真剣な眼差しで
耳を傾けてくれていた。
あなた

それからピアノに感情がなくなった。
それをなんとかしたくて、
ここで無我夢中で弾いてたんです

あなた

いつもイライラしてて、
だから昨日のも八つ当たり。
こっちこそ、本当にごめんなさい

頭を下げると、拓先輩の手が頭に載った。
笹葉 拓
笹葉 拓
話してくれて、ありがとな
あなた

いえ……私も聞いてくれて、
うれしかったです

拓先輩の純粋さに侵されて、
私も素直な気持ちを伝えられた。
笹葉 拓
笹葉 拓
俺、思うんだけどさ。
今のまま、苦しいって気持ちを
ぶつけたらいいんじゃないか?
あなた

え……

笹葉 拓
笹葉 拓
無理に明るい曲を弾かなくても、
初めてあなたのピアノを聞いたときの
俺みたいにさ
笹葉 拓
笹葉 拓
悲しい気持ちに寄り添ってほしい、
そう思って音楽を聞くやつも
いると思うんだよ
あなた

(今の私の音でも、
いいって言ってくれてる)

拓先輩の言葉で、肩の力が抜けた。
あなた

(そっか、悲しんでいたっていいんだ。
音が色を失くしたって、
それでも誰かの心に寄り添えるんだ)

ようやく、自分の悲しみを少しだけ
認められた気がした。
あなた

先輩

私は涙を拭って、
頬に触れている拓先輩の手を握る。