来希の動きがピタリと止まり、
私から少し離れると、
真意を探るようにじっと見つめてくる。
断言されると思ってなかったんだろう。
来希にしては珍しく、一拍の間のあと……。
***
【来希side】
あなたが部屋を出たあと、
少しして遠くからガチャンッと玄関のドアが
閉まる音がした。
俺は空虚感を覚える胸を押さえた。
俺は虚しさにも似た感情から
目を背けるようにして、
スマホを手に取る。
そして、適当な女の子を
部屋に呼び出してみたものの……。
相手を気持ちよくするためのセリフ。
軽滑りする言葉が、すらすら口をつく。
女の子を組み敷きながら
俺の頭をよぎったのは、
あなたの顔だった。
つい、笑みがこぼれてしまう。
俺が呼び出した女の子が、
ぴたりと肌を合わせてくる。
心の中で毒を吐きながらも、
俺は笑みを崩さない。
ベッドで無粋な質問をしたのは初めてだ。
思い返せば、あなたと過ごした時間は
面倒だと感じることがなかった。
今さらながら、適当な付き合い方を
してきたことを後悔する。
ベッドから出て服を着ると、
女の子から「えっ」と困惑の声が返ってくる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。