第2話
2話 男の子の涙
泣いている理由には興味がなかったので、
彼のことは視界に入れないように、
ただピアノを弾く。
すると……。
頼んでもいないのに、
ぽつりぽつりと自分の恋愛話を
打ち明けてくる彼は、
手近な椅子に腰かける。
気づけば、彼の話に耳を傾けている
自分がいた。
あまりにもしょんぼりしているので、
さすがに放っておけなかったのかもしれない。
これまで上手だねと
ピアノを褒められることはあっても、
苦しみながら弾いていたことを
見抜かれたことはなかったから。
目をつぶり、私のピアノに
聞き入っている様子だった。
お母さんが残したピアノの音。
それを再現できない自分を許されたような、
そんな安堵感に包まれる。
にかっと笑った彼を見つめながら……。
自分の空っぽなピアノでも、
必要としてくれる人がいる。
その事実にかすかではあるけれど、
胸に希望の光が灯るのを感じた。
***
翌日の放課後。
当番で図書室掃除をしていると……。
昨日、音楽室で失恋の告白をしてきた男子が、
本棚の陰に隠れながら、ひとりの女子生徒を
見ているところに遭遇してしまった。
その横を通り過ぎる間際に、
ボソッと呟く。
呼び止められたかと思ったら、
ついでに腕も掴まれた。
先輩なので一応、
難癖をつけられないように
自己紹介をする。