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第15話

15話 俺がそばにいる
笹葉 拓
笹葉 拓
そっか……そっか、
よく頑張ったな!
拓先輩がぎゅっと私を抱きしめてきた。

目を見張っていると、
背中をあやすようにさすられる。
笹葉 拓
笹葉 拓
つらかったはずなのに、
本当に頑張った
あなた

……っ

鼻がつんとして、
目の奥が熱くなる。
あなた

(優しくされたら、
もう虚勢なんて張れない)

ぶわっと涙があふれてきた。
あなた

うっ……ふう

嗚咽をもらすと、
拓先輩が私の頭を強く
自分の胸に引き寄せた。
笹葉 拓
笹葉 拓
少しずつでいい、
焦らなくていいから
笹葉 拓
笹葉 拓
あなたのスピードで
本当の音を取り戻していけばいい
あなた

はい……はい、
ありがとうございます

その胸に顔を押し付ければ、
背中を抱く腕に力がこもる。
笹葉 拓
笹葉 拓
そばにいる
あなた

(まるで、拓先輩の彼女に
なったみたい。そんなわけない、
なのに……幸せ)

目を閉じて、
温かい胸に身体を預けていると……。
笹葉 拓
笹葉 拓
なあ、ちょっと俺に付き合って!
あなた

えっ

拓先輩は私の手を掴み、
どこかへと連れていく。
あなた

(もうっ、急になんなの!)

***
あなた

(これは、どういうこと?)

私はなぜか、拓先輩の兄弟が通っているという
保育園に来ていた。
笹葉 拓
笹葉 拓
俺、兄弟の送り迎えすることも
あるからさ、先生とも顔見知りなんだ
あなた

だからって、なんで保育園に?

笹葉 拓
笹葉 拓
おーい、みんな。このお姉ちゃんが
なんでも弾いてくれるってよー
私の問いには答えず、
拓先輩は信じられない言葉を
みんなに投げかけた。
園児1
園児1
お姉ちゃん、なんか弾いて!
園児2
園児2
早く早くーっ
ピアノを弾いてとせがまれて、
私は助けを求めるように先輩を見る。
笹葉 拓
笹葉 拓
ピアノ弾く許可なら
とってあるから
あなた

そこが問題なんじゃなくて、
私、大勢の人に聞かせられるような
ピアノ、まだ弾けないのに……

笹葉 拓
笹葉 拓
俺はあなたのピアノが好きだ
あなた

なっ……

あなた

(好きって、心臓に悪いから
やめてほしい)

拓先輩は戸惑っている私の手を引き、
ピアノの前に立たせる。
笹葉 拓
笹葉 拓
俺にいつも聞かせてくれてるだろ。
みんな、あなたのピアノを
気に入るはずだ
笹葉 拓
笹葉 拓
自分が信じられないなら、
俺の言葉を信じろって
あなた

(いつもまっすぐな拓先輩は、
嘘をつかない。だから、私は……)

先輩に促されるようにして、
ピアノの前に座る。
あなた

(先輩の言葉を信じて、
弾いてみたいなんて思ってしまうんだ)

先輩を信じて、私は子供が好きそうな
猫ふんじゃったやキラキラ星を弾く。
園児1
園児1
猫ふんじゃった、猫ふんじゃった
園児2
園児2
ふんじゃー、ふんじゃー、
ふんじゃった、あははっ
園児たちは好きなように歌って、
楽しそうに笑っている。

思った以上に私のピアノは大好評で、
自分の音楽でみんなが笑顔に
なっていくのを見ていたら……。
あなた

(自分のピアノが
少しだけ好きになれた気がする)

笹葉 拓
笹葉 拓
ピアノをやってて、
つらいこともあったと思うけどさ。
逆に楽しいこともあったはずだ
笹葉 拓
笹葉 拓
これからは悲しい記憶が薄れるくらい、
ピアノを弾いてて楽しいって思える
瞬間を作っていけばいい
あなた

(そっか、私は悲しみを忘れたくて、
お母さんの死から目を背けてきたけど……)

あなた

(忘れようとしなくていいんだ。
過去ばかり振り返るんじゃなくて、
今や未来を見ていけばいい)

あなた

(楽しい思い出を重ねていけば、
いつか悲しみに向き合える日がくるから)

ようやく目が覚めた気がした。