第3話
(いきなり呼び捨て!?
人懐っこいにもほどがあるよ……)
じゃあ、自己紹介も済んだわけですし、
私はこれで……

なあ、あなた。
話しかける勇気がないとき、
どうやって自分を奮い立たせれば
いいと思う?
(またなの?)
(迷惑だって、
こんなに態度に出してるのに、
伝わってないとか……)
私には関係ないので、
お答えしかねます

好きな人がいるって
面と向かって言われちゃったけど、
諦められなくてさ

しつこいと嫌われると思う?
まあ、私なら即アウトですね。
鬱陶しいと思います
思ったことをそのまま答えたら、
拓先輩は本棚に手をついて、
燃え尽きたみたいに項垂れていた。

しつこい……。
そっか俺、しつこいか……
(面倒くさ)
……まあ、ここでアプローチしなかったら、
想いを知られないまま
終わっちゃうわけですし
とりあえずぶつかってみるのも、
ありかと

彼女に好きな人がいてもか?
そもそも、その好きな人いるって話、
どういう状況で言われたんです?

気になってる人とか
いるのかって聞いたら、
『好きな人がいます』って即答された
(うん? それって、好きな人が
拓先輩だって可能性もあるんじゃ……)
(でも、根拠もないのに
下手に期待させてそうじゃなかったら、
しんどいだろうし……)
好きな人ってことは、
まだ彼氏じゃないんですよね?
なら、押せば勝ち目があるんじゃ
ないですか

そ、そっか!
確かに、俺が彼女にとっての
いちばんになればいいんだしな!
(ちょ、ちょろい……。
どんだけプラス思考なの?)

ありがとう、なんか元気出てきた
嬉しそうにはにかまれ、
ばつが悪くなる。
(励まそうと思ったわけじゃ
ないんだけどな)
悲観妄想ばっか膨らませてないで、
さっさとぶつかる! ヘタレのままじゃ、
一生報われませんよ

ヘタレ……
撃沈している拓先輩を置き去りにして、
私は掃除を再開した。
***
放課後になると、また拓先輩が
第2音楽室にやってきた。

あなた! おかげであのあと、
彼女に話しかけられた!
(そんなこと、わざわざ報告して
なんて頼んでない……)
(いつの間にか、恋愛の相談相手みたいな
立ち位置になってる気が……)
(いやいや、そんなつもり
まったくないし!)
ぶんぶんと頭を振って、
私はピアノを弾き続ける。

あのとき、背中を押してくれて
ありがとな!
(拓先輩は私が無視をしても
気にしてない)
(それとも、シカトしてることに
気づいていない……?)
ピアノを弾き終えると、
私は鍵盤から手を離す。
先輩は立ち上がって、
パチパチパチパチッと拍手した。

俺、あなたのピアノ、
やっぱ好きだ
……!
(好きって……心臓に悪い)
言葉がストレートすぎて、
拓先輩はピアノのことを褒めただけなのに、
ドキッとしてしまった。
……それで? 楽しくお喋りして、
そのあとは?
平常心でなかったからかもしれない。
私はつい、先輩の相談にのってしまう。

そのあと? またねって別れて──
はあ!? ピュア男子か!
先輩だということを忘れて、
私はつい突っ込んでしまった。
そこは『今度オススメの本を貸すよ』
とか、次の約束を取りつけなさいよ!

でも、また話しましょうって
言ってくれたし……
そんなん、ただの挨拶でしょ!
社交辞令だわっ

そっか……わ、わかった。
次こそ、約束を取りつけてくる!
具体的な日付も決めること!

了解! 師匠!
マジで相談に乗ってくれて、ありがとな
(師匠になったつもり、ないけど……。
でも、なんかほっとけない人だな)
無邪気なまでに私を頼ってくれる先輩が、
可愛く思えてしまった私は……。
(相当、先輩のピュアピュア男子ぶりに
洗脳されてる)
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