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第14話

14話 奏で始めた心の音
休日、私は家のグランドピアノの前にいた。

外装は埃を被って、薄っすらと白くなっている。
あなた

お母さん……

私はすう、はあ……と深呼吸をした。

それから、お母さんとの思い出がありすぎて、
ずっと座れなかったピアノの椅子に腰かける。
あなた

(私が小さかった頃は、
このひとつの椅子にふたりで座って、
キラキラ星弾いたっけ)

あなた

ぷっ……

それを思い出したら、拓先輩の不器用な
キラキラ星を思い出して、吹き出してしまった。
あなた

私が初めて覚えたのも、
キラキラ星だったけど……。
あそこまで酷くなかったな

そっと鍵盤に触れると、
ポロンッと音が鳴る。
あなた

(あ……)

あなた

(思ったより、ピアノを弾いても
心が苦しくない)

私はもう一度、大きく息を吸って吐き、
キラキラ星を弾き始めた。

──♪~♪~♪~
あなた

(音が、前よりも軽い。
キラキラはしてないけど、
ちゃんと弾んでる)

これまでつらすぎて、
最後まで弾けなかったはずのキラキラ星。

今は次の音を出したくてたまらない。

信じられないことに弾き終えると、
パチパチパチパチッと拍手が聞こえてきた。
お父さん
お父さん
久しぶりに、そのピアノの音を……
聞いたよ
あなた

お父さん……

うしろに涙ぐんでいる
お父さんが立っている。
お父さん
お父さん
ピアノの先生から、これを預かったんだ
差し出された紙は、
コンクールの案内状だった。
あなた

(ピアノ教室、ずっと休んでて
行ってなかったのに……。
先生、私のこと気にかけてくれてたんだ)

あなた

でも、私はまだ……

あなた

(誰かに聞かせられるような音を
出せる自信がない)

お父さん
お父さん
急かしてるわけじゃないんだ。
お母さんのこともあるし、
あなたが決めていいから
あなた

わかった、考えておく。
ありがとね、お父さん

あなた

(このピアノが弾けた。
もしかしたらコンクールでも……)

そんな期待を胸に、
案内状を抱きしめた。

***
あなた

(コンクールかあ……)

翌日、音楽室でコンクールの案内状を
見ていると……。
笹葉 拓
笹葉 拓
コンクール!? 出るのか?
私の手元を拓先輩が覗き込んでくる。
あなた

(うわっ、近い……)

拓先輩のワイシャツ越しでもわかる
硬い胸板が、私の肩に当たっている。

感じる自分以外の体温に、
胸が高鳴っていた。
笹葉 拓
笹葉 拓
俺、見に行ってもいいか?
興味津々に振り返った拓先輩と、
至近距離で目が合う。
あなた

あっ

笹葉 拓
笹葉 拓
あ……!
あなた

(拓先輩の顔が赤い、
きっと私のも……)

あなた

えっと……その、
コンクールはまだ出るかどうか、
決めてないから……

なにか言わなくちゃと、
なんテンポか遅れて返事をする。
笹葉 拓
笹葉 拓
あ、ああっ、そうなのか
慌てたように私から身体を離し、
拓先輩は目を明後日のほうに向けながら、
頭を掻いていた。
笹葉 拓
笹葉 拓
こ、コンクールに出るのか
迷ってるのって、
お袋さんのことが原因か? 
やっぱ、まだつらい……とか
あなた

それは……当然です

あなた

でも、先輩のキラキラ星のおかげで、
少しだけ前向きになれたんですよ

笹葉 拓
笹葉 拓
あんなピアノで?
あなた

家に、お母さんとの思い出が詰まってる
ピアノがあるんですけど……。
今までは見るだけで悲しくて、
近づくことすらできなかったんです

あなた

でも、心が沈みそうになったとき、
先輩のキラキラ星を思い出したら、
元気になれた

あなた

それで昨日、ようやく弾けたんです

笹葉 拓
笹葉 拓
そっか……そっか、
よく頑張ったな!
拓先輩がぎゅっと私を抱きしめてきた。