第13話

１３話　気持ちの決着

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2021/02/23 04:00

後輩の女の子

先輩、好きです

笹葉拓

…………

告白された俺は、すぐに返事ができなかった。

笹葉拓

（俺、この子のことが好きだった。
それなのに、なんで……）

笹葉拓

（こんなときでも、あなたのピアノが
聴きたいなんて思うんだよ）

笹葉拓

……そっか

笹葉拓

（きっとその時点で、
俺は彼女のことをもう
好きじゃないのか）

笹葉拓

（あの来希とかいう男と
あなたが一緒にいると
ソワソワすんのも、俺が……）

笹葉拓

（嫉妬してたからだ）

笹葉拓

（もう、それって、俺があなたのことを
好きってことじゃんか）

笹葉拓

（気づくのが遅れたけれど、
ちゃんと気づけてよかった）

気持ちに応えられない以上、
これまでの俺は彼女にとって
思わせぶりな態度をとっていた
ことになるんだろう。

誠心誠意の謝罪を込めて、
俺は頭を下げる。

笹葉拓

……本当にごめん。
俺、好きな人がいるんだ

後輩の女の子

えっ……

笹葉拓

そ、そうだよな。
俺、最初は好き好きオーラ全開で
近づいてたし、勘違いさせたよな

笹葉拓

ほんと、申し訳ない！
けど俺、好きな人がいるんだ

笹葉拓

（彼氏がいるって知ってても、
辛い恋になるってわかってても、
それでも──）

笹葉拓

自分の心には、嘘つけないから……
ごめん

＊＊＊

告白を断って、
すぐに向かったのは音楽室。

笹葉拓

（あなたのピアノが聴きたい。
いや……あなたに会いたい）

そう思って音楽室の扉の前まで来たとき、
ふたりの話し声が聞こえてきた。

篠宮来希

あいつのことが気になる？

扉の取っ手を握り締めた手が震える。

笹葉拓

（あいつとふたりきりだったのか。
そりゃそうだよな、恋人なんだし）

開けるのが怖い、
でも確かめずにはいられない。

その衝動に駆られ、
俺は少しだけ扉を開き、
中の様子を窺う。

笹葉拓

……！

すると来希とかいう彼氏があなたを
抱きしめている光景が目に飛び込んできた。

気まずくて、ひよった俺は扉を閉める。

笹葉拓

（覚悟してたけど、やっぱ堪えるな）

笹葉拓

（ふたりが本当に好き合ってるなら、
俺の存在は邪魔になるんじゃないか？）

笹葉拓

（想いを押しつけるのは
自分勝手すぎる）

笹葉拓

（俺は、この気持ちを伝えても
いいのか……？）

＊＊＊


【あなたside】


拓先輩が出ていってから、
無心でピアノを弾こうとした。

けれど……。

あなた

（今頃、告白とかされてたりするのかな。
だとしたら、結構しんどいかも）

きゅっと唇を噛んだとき、
来希が後ろから抱きしめてくる。

篠宮来希

あいつのことが気になる？

耳元で囁かれ、私はため息をつく。

あなた

……やめて。
私はもう来希となあなあな関係には
ならないって言ったでしょ

篠宮来希

好きな子が切なそうな顔してんだから、
こうしたくなるのは男なら普通の衝動
だって。……諦めて

あなた

（私の悲しい気持ちを慰めようと
してくれてるのはわかる。けど……）

この腕が拓先輩だったらと思ってしまう心を
私はもう止められなかった。

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第14話１４話　奏で始めた心の音

涙鳴

コンテスト受賞作品

グランプリ

好きになるのはキミ限定【完結】

なぁな

編集部コメント

主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした！<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。