真っ暗で誰もいない。
…しばらく寝ていたのだろうが、
人外様の所には来れたのだろうか。
来れていなかったら私の努力
全部が無駄になる。
…あれ、あそこに居るのって……
私の大好きなお姉ちゃん。
唯一私に優しくて、遊んでくれる、
私の誇りのお姉ちゃん。
でも、なんでこんなところに…?
真っ暗な空間の中、
私は姉に歩み寄った。
違う、違う。私のお姉ちゃんは
こんなこと言わない。
こんな、酷いこと…
違う違う違う違う。
分かってるけど、でも……
……
夢………か……
…馬鹿みたい。自分で自分の
首閉めてる。
…でも、よかった、夢で。
あのお姉ちゃんが、本物じゃなくて…
さっきの真っ暗な空間とは
また違った感じの、和風なお部屋の
中らしき場所にいた。
電気がついていないせいで
凄く不気味だ。
見た感じでは周りに
それらしき陰はない。
…すると突然、部屋の電気が
一斉につき始めた。
このくらい別に怖くない。
…だって別に、死ぬのだってもう
怖くもなんともないんだから。
お姉ちゃんに嫌われる以外なら
もうどうでもいい。
そうつぶやくと、電気のついた
部屋の奥に5つの灯火が見えた。
ふよふよと浮かぶ灯火は、
私の目の前で停止した。
青い灯火から、
声が聞こえた。
すると、灯火はポシュ、と音をたてて
人型にかわった。
…私は今からこの人達に
食べられるのかな。
生贄だし。
まぁ…いっか。
未練なんてこれっぽっちも
残ってないし。
青鬼様は、とても興味深そうな
顔をした。
…いやな予感がする
…私、あなたの名字あなたの下の名前。このたび
人外様の同居人になりました。
…
……
なんでこうなったんだろう…
まあ、あっちの生活よりは
断然いいか。
あそこから逃げ出せただけでも
まだいいでしょ。
そう言って青鬼様が差し出してきたのは
六輪の青色の花だった。
…なんで?
まぁとりあえず
受け取っておこう…
…昔お姉ちゃんが言ってた。
『人外から六輪の花を受け取るのは、
その人の“奴隷”になる証』
メイドとかならまだしも
奴隷…!?
パシッ
…やってしまった。
青鬼様の手をはたいてしまった。
受け取らないためとはいえ
いくらなんでもこれは…
手をはたいた音を聞きつけて
他の人外様が集まってきた。
青鬼様は焦っている
…バレたら困ることなのだろうか
結局このあとも数時間
怒られてました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!