第108話

107,努力して工夫して向かい合え!
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2021/12/30 11:28
──あれは、確か小学校2年生の時。
運動があまり得意とは言えないマタロウは、いつもかけっこでビリだったが、その年の運動会の徒競走で何と一等賞をとれた。

お母さんは、きっと沢山褒めてくれる、そう思った。だけど、あろうことかお母さんの第一声は『褒め』では無かった。
お母さんはこう言ったんだ。
     『運が良かったね』
玉田マタロウ
玉田マタロウ
そう……やっぱり僕は、の男なんだ……
まずい。
このままではマタロウが完全に自信をなくし諦め、エマとウー助どころか、マタロウを含めたこの場の全員の安全は、全く保証されないものとなってしまう。

気付けば、あなたの口は動いていた。
姫舞(なまえ)
姫舞あなた
……本当に、そうなの?
玉田マタロウ
玉田マタロウ
えっ……?
マタロウの動きが止まる。
マタロウは、さっきよりもっと古い記憶を思い出していた。
マタロウが、まだ幼稚園生だったある日のこと。

おじいちゃんの家の縁側で、子供がやるには難易度が高いプラモデルを作ってみたことがあった。

だけどなかなか上手く組み立てられない。
だから、途中で諦めて、投げ出そうとしたんだ。
玉田マタロウ
玉田マタロウ
もうムリ!できないよ!
すると、マタロウの隣に、おじいちゃんが腰掛けて言った。
マタロウの祖父
マタロウ、投げ出す前に、『つくりあげたい』と強く心に刻んでみなさい。人は、努力すれば、報われるんだ。
努力をし、工夫をし、最後まで諦めずに向かい合う。マタロウには、そんな人間になって欲しいんだ
そう言うと、おじいちゃんはマタロウにパーツを手渡した。
玉田マタロウ
玉田マタロウ
(そうだ!思い出したぞ)
『努力して、工夫して、向かい合え』──いつも、おじいちゃんはそう言っていた。
玉田マタロウ
玉田マタロウ
(あの時だって……)
そう──あのときとは、おじいちゃんが亡くなる間際のことだ。

おじいちゃんのおかげで最後まで組み立てられた、あのプラモデルのロボットを握りしめて、マタロウは布団に寝ているおじいちゃんにすがりつき、泣いた。
玉田マタロウ
玉田マタロウ
じいちゃん……死ぬな……!
マタロウの祖父
……人は、いつか死ぬ。お前たちより先に行くだけだ
玉田マタロウ
玉田マタロウ
じいちゃん!
じいちゃんだけが友達なのに………!
マタロウの祖父
友達がいなければ、つくればいい。
努力して、工夫して、目の前にあるものと向かい合う──それで、全てうまくいく……
マタロウは、少しずつ声がか細くなっていくおじいちゃんの手を必死で握り締めた。

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