そして、息をするように二週間が過ぎた。
時間って進むの早いな、と今更になって思う。
私たちは今、あの彗星が落ちた公園に来た。
明日菜は、前よりも少しサバサバしている。
壮真は、短髪の男性みたいになりたいと言って毎日料理を手伝っていた。
私はというと‥‥‥うん、あまり変わってないかも。
真顔の黒髪ロングの女性と苦笑する高身長の男性に向かって、ポニーテールの女性はあはは、と楽しそうに笑った。
彗星が落ちた公園のど真ん中に立たされた私たちは、これからどうすれば良いのか戸惑う。
それを見越したかのように、高身長の男性が身をかがめて優しく笑った。
あぁ、本当、その表情。変わらないなぁ。
その綺麗な笑顔も。
その人当たりの良さも。
その無条件の優しさも。
‥‥‥私は、分かんないや。でもきっと、変わらない。
私はこっそり、ポニーテールの女性の服の裾を引っ張った。
ポニーテールの女性は不思議そうに首を傾げながら、私に耳を貸す。
私は高身長の男性を横目に、そっと囁く。
するとポニーテールの女性は数秒間目を見開いて、それからくしゃり、とまた太陽のように笑う。
するとまた、彼女は目をぱしぱしとさせて、それから眩しいくらいにはにかんだ。
うん。私も、私が大好きだよ。
言葉とは逆に、笑顔はそう言った。
きっとわざと言わなかった。
だってさ、言われたらきっと泣いてしまう。
女の涙は安くない、でしょ?
いつか、彼女が言ったことを覚えている。
またね、とは言わない。
もう、私たちに未来に行ってしまうくらい辛いことなんてないから。
帰ったらきっと、幸せがいっぱい待ってる。
辛くたって、今までの暗い道よりは辛いはずがないんだ。
だって、そうでしょう?
ひとりじゃないし。
まだやることいっぱいあるし。
私たちより辛い人、心当たりあるし。
だからその先も、大丈夫。
‥‥‥‥‥‥‥ぜろ。
きっともう、勝手に諦めてなんかやらないから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。