しん、と静まり返った部屋に、外の風が入り込む。
また、しん、と静まり返る。
‥‥‥え?と、ということは、行方不明になった皆は実は未来にいて、二週間後にひょっこり帰ってきて、それで、それで‥‥
あぁ駄目だ。頭がパンクする。
聞きました、と。はい。
壮真は、そうだ、と言わんばかりににししと笑う。
そうか、そうだったんだ。
僕が思ってたよりずっと、皆は僕が大好きで、だからこそとても傷付けてしまったんだ。
‥‥‥あぁ、なんて酷い奴。
土下座じゃ済まないじゃないか、こんなの。
しかも皆と話し合う前に、僕がこの町から離れたんだ。
皆は探したと行っていたけれど、そんな簡単に見付かるわけないしそもそも僕は隠れていたわけだし‥‥‥
僕の親だって仕事ばかりで連絡なんて取れない。
うわぁ、完全に僕のせいでこんな時間が経ってるじゃん。
あーあーあーあー‥‥もう何から謝ろう。
‥‥‥けど、その前に。謝るより先に言わないと。これだけは、ずっと、ずっと、言えなかったから。
明日菜はいつも通りポーカーフェイスだけど、壮真と來春は不思議そうに首を傾げた。
僕は皆を真っ直ぐ見つめて言った。
すると今度は、皆が僕を真っ直ぐ見つめる。嬉しそうに笑って。
んなの知ってるわ、とでも言うように。
どこに、と僕が告げる暇もなく、來春は立ち上がる。
それに続いて壮真、明日菜も立ち上がった。
‥‥‥あまりに急展開すぎやしないか?
未来は僕を待ってくれないのか。
僕はそんなことを考えて、苦笑しながら立ち上がる。
皆は部屋から出ようと襖を開ける。
そこで、明日菜があ、そういえば、と呟いた。
それに続いて、他二人もあ、と呟く。
まだ何かあるのか、と思って首を傾げると、皆はいつもみたいに笑って声を揃えた。
『『『おかえりなさい。とわ』』』
改めてね、と來春がはにかむ。
‥‥‥あぁ、ここ数日の僕、幸せすぎだ。
何なんだ、皆して。僕を泣かせる気満々じゃないか。
そんな嬉しそうに、眩しいくらいの笑顔で言われちゃ、もっと幸せになれって言われてるみたいで、勘違いしてしまいそうだ。
僕はこの時、自分の幸せの全てを“笑顔”にのせた。
まるで、それが続いて欲しいと、僕らはずっとここにいたいと、願うように。
そして、その幸せを噛み締めるように、包み込むように。
今まで味わえなかったぶんの幸せを全部のせて、笑った。
──────これからもよろしくね。
そう、約束するように。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。