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第12話

額縁の錆。_sоυ
1,553
2018/09/08 03:40


「ぃ…ゃ………………!」



咄嗟に出た、思いもよらない言葉。

拒絶。


ハッとして彼の顔を覗く。


ただ儚げな瞳が潤む。

真っ直ぐに俺を見つめている。

そんな表情も、やはり彼らしかった。





「ごめん」





俺の思いを塞ぐように、言葉を紡ぐ。


そして、連ねる。


一人で。




「やっぱり、嫌だよね…ごめん」




(………ぅ)





「僕って気持ち悪いよね、ほんと。」




(…ちがう)





「…いきなりごめんね、そうちゃん。」





それだけ言うと、
彼は立ち上がって自室へと足を向けた。



(…勝手だ)



そんなことを言って欲しい訳じゃない。



この声には感情を感じない。


彼の声じゃないから。





──"本当の"彼の声じゃ、ない。









届かなくたっていい。

聞いてくれなくたっていい。



本当のことを、聞きたかった。





こんなことを聞く俺を、許して。



ガキだって思ってくれていいから。



聞こえないフリしてくれて、いいから。







だから──────















「ねぇ、いぶくん。」




「………何」















許して。


















「何で俺に───キス、したの?」


















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