✳︎あなたさん1年ズと同級生
『ごめんね、虎杖くん!ちょっと遅れちゃった!』
「全然大丈夫〜‼︎俺も今来たとこ!」
今日は任務帰りにたまたま時間が空いたので、同級生の虎杖くんとお茶してから高専に戻ろうという話になった。
「あなた任務お疲れさま!」
『ありがとう、虎杖くんも任務あったんだよね?お疲れ様』
「おう!サンキュー!」
こんな感じで、虎杖くんはとても元気がいい。
そして凄くフレンドリー。
私が学校に転入して来た時も、一番最初に話しかけてくれたのは虎杖くんだった。
「よろしく!あなたっていうんだ〜‼︎俺虎杖悠仁!」
「慣れない環境だと大変だよな〜...俺も急にコッチ来たから気持ち分かる‼︎‼︎」
そんな感じで、話すことが少し苦手な私に、凄く優しく話しかけてくれたのを覚えている。
虎杖くんは明るくて、おひさまみたい。
........出来ればもう少し仲良くなりたい...なんていうのは、本人には恥ずかしくて絶対言えないけど。
「それでさぁ〜.....あなた?どうかした?」
『えっ?あ、ううんごめん何でもない!何?』
「お茶するとここことかどーかなと思って」
『わっ凄いキレイ』
そこにあったのは、見るからにオシャレな雰囲気を漂わせているカフェ。
「ここで大丈夫そ?」
『うん、すごい素敵!』
「良かった〜‼︎じゃあはい、どうぞ!」
虎杖くんが先に扉を押してくれて、私が店内に入るのを側で待っている。
『あ、ありがとう』
店員「いらっしゃいませ、2名様でいらっしゃいますね。こちらへどうぞ。」
店員さんに案内されたのは窓から緑が見える、奥のテーブル。
高校生がこんな洒落た場所来て良いのかな...。
「東京ってすげ建物高いよな〜」
『そうだね』
虎杖くんはパラパラとメニューをめくる。
私は、さっきの任務の報告書を書く。
「あなたどれ食べる?」
『えっと...どうしよう...虎杖くんはどれにする?』
「俺はこれかな〜」
虎杖くんが指差したのは、抹茶としらたま、小豆がのった和風のパフェだった。
『美味しそう...‼︎』
「これと悩んだんだけど...」
もう一つは、苺やオレンジ、生クリームがのっているパンケーキ。メニュー表には店内一番人気と書かれている。
『あ、じゃあ私それ頼もうかな...。虎杖くんに半分あげるよ』
「えっマジ⁉︎やった‼︎じゃあ俺のも半分あげる!」
ニコニコして話す虎杖くん。
この笑顔が見られるたび、本当に幸せな気持ちになる。
虎杖くんが注文をしてくれたので、デザートが来るまで少し話をしながら待った。
店員「お待たせ致しました」
しばらくすると、さっきの店員さんがデザートを運んできてくれた。
『美味しそう〜!』
「うおっすげーー!!」
運ばれてきたデザートを見て、子供みたいにはしゃぐ虎杖くんが可愛い。
「いただきます〜!」
『いただきます』
食べてみると、生クリームとフルーツが丁度良い甘さ加減で、くどくなくて凄く食べやすい。
パンケーキも柔らかくて美味しい。
「美味っ‼︎‼︎」
『美味しいね!...あ、虎杖くんパンケーキどうぞ』
「ありがとう!じゃ俺のもどーぞ!」
『ありがとう』
虎杖くんからもらったパフェは、抹茶本来の苦味と小豆の甘さのバランスが良くて、凄く美味しかった。
「ん、パンケーキもウマッ‼︎」
『パフェも美味しいよ〜』
誰かとこんな風にお茶したりすることが、こんなに楽しいとは思わなかった。
虎杖くんみたいに、ふしぐろくん?と、くぎ...さきさんともちゃんと喋れると良いな...。
「....あなたって、すげえ食べ方とか字とか綺麗だよね」
『へっ?』
不意にそんなことを言われたので、思わず変な声が出てしまった。
『そ、そうかな...』
「おお、さっきの報告書も丁寧だったから凄いなーって!」
『あり...がとう...』
ビックリした...。
『虎杖くん、本当に良いの?』
「ヘーキヘーキ!全然大丈夫だって!」
結構高いパンケーキを注文してしまったのに、虎杖くんが私の分も払ってくれた。
申し訳ない...。
虎杖くんは、「俺が誘ったんだから」って言ってくれてたけど...。
『!』
まただ。虎杖くんは、歩いている時常に車道側を歩いてくれている。
さっきも、ドアを開けてくれたり、話題がなくならないように話しかけたりしてくれた。
気遣いなのか、無意識にやっていることなのかは分からないけれど...。
そういった優しさが、きっと周りの人を笑顔にしているんだろうな...
『.......虎杖くん』
「ん?」
『....今日は...ありがとう』
「!...おう!」
また行きたいな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。