氷雨は冬の区へと帰ってしまった。
どうして?
どうして氷雨がこの国にいて、
どうして冬の区にいて、
どうして宣戦布告なんかしにきて、
どうして私たちのことを忘れていたの?
どうして...
⁉せ、雪...?
学園生徒が...?
...え?
ハルは冷たくそう言って、部屋を出る為に
扉へと向かって行った。
私には分かる。
ハルは、本当は戦争なんてしたくない。
ただ、春の区を守る為に戦おうとしている。
そして、雪や私に戦場に立って欲しくない。
だから、冷たくした。
冷たくすれば、もう、来ないと思ったからだと
思う。
でもね、ハル。
私を甘く見ないで欲しいな。
私がそう言うとハルは、扉に向かっていた足を
止めた。
私がそう、大きな声で言うと、ハルは
大粒の涙を見せた。
ハルはそう言って、泣きながら笑った。
ははっ。ハルは可愛いな。
私はそう言って、「にやり」と笑った。
ハルはか細い声で、そう言った。
雪はそう言って、いたずらっぽく笑う。
あ...
皆、笑ってる...
絶対に守るんだ。
春の区を、皆を、皆の笑顔を。
そして、生きて帰るんだから。
日本人、舐めるなよ...?
さぁ。開戦だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。