目を開けたら、知らない所のソファーに寝ていた。
あれ?私、竜巻に呑み込まれて死んだはずじゃ...
あ、もしかして、ここは天国?
ここ、誰かの部屋かな?
天井にシャンデリアあるし...
突然、寝ている私をツインテールの女の子が
覗き込んできた。
駄目だ。状況処理が追いつかない。
ここは天気の国、クラウディア。
普通の人間が住む世界の上、つまり
人間界の空にある、天空の島。
クラウディアは、春の区、夏の区、秋の区、冬の区
の4つの区域に別れている。
私たちが今いる区域は、春の区。
ハルは、春の区の一番偉い、つまり
春の区の頂点に立つ者。
クラウディアに住む人々は、人間界の人間とは違い
魔法が使える。
魔法は、皆共通で天気魔法。
人間界の天気は全て、クラウディアの人々が
操っている。
そして、残念ながら、上下関係が激しい。
魔法の手伝いをする眷族を持つ者は
“印”と呼ばれる。
印は、貴族に多く、“無印”、つまり
眷族を持たない平民を差別している。
ハルは申し訳なさそうに、そう言った。
5年って...。どんだけ待たなきゃいけないの...。
雪..氷雨...会いたいよ....。
あれ?今、雪の声が聞こえたような....
私の寝ていたソファーの向かいにあった
もうひとつのソファーに寝ていたのは、紛れもない
私の幼馴染みの雪だった。
視界が滲む。
雪はそう言って、笑いながら、私の頭を撫でた。
私は、そう言ったけど、その言葉は
凄く嬉しかった。
雪は昔から、不器用で生意気だけど
誰よりも優しい。
○月 ××日 △曜日
天気: 竜巻
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!