「「え?」」
警察の方と僕の声が重なった。
息子さん?
復讐?
「あの如何云うことですか?」
「今回の殺害予告、之は彼女による自作自演だ」
「「!?」」
「どう考えても変だろ。
怪しい人物が二人いるなら監視していれば善い。
なのに態々探偵社を雇った。何故?
・・・僕達に復讐する為だ。自分が死んでしまえば依頼をこなせ無かった探偵社は非難を浴びるからな」
「何故そうだと言い切れるんです?」
警察の方は睨みながら乱歩さんに尋ねる。
異変に気付き他の警察も何人か近付いて来たので
乱歩さんに注目が注がれる。
視線を集めた本人は懐から眼鏡を取り出して掛けると、まるで準備が整ったかの様にニヤリと笑う。
「軍警の癖に情報が足りてないね!よく聞きなよ」
彼はそう言うと真剣な表情へと変わった。
「僕は数年前とある事件の依頼を受け、犯人を見付けた。犯人は此の人の息子だった。息子は逮捕されたが金の力で直ぐに釈放された。
然し世間はお菓子企業の息子逮捕に厳しい目を向け
企業はバッシングを受けた。
忽ち赤字経営になり経営事態も難しくなっていく
・・・自分のせいで会社が駄目になる光景に息子は
耐えられなかったんだろう、程なくして彼は自らの
命を絶った。
貴女は自分の息子の遺体を見た時に思った筈だ。
息子が犯人だと暴いた張本人である武装探偵社に復讐しようと。・・・・・・そうだろ?」
乱歩さんが視線を向けた先には依頼主さん。
僕は自然と彼女の方を向いた。
然し何処か余裕がある様に見える。
「・・・・・・もしも其れが本当だとして、私は如何やって死ぬつもりだったのかしら?警察の方もこんなに居てとても死ねそうに無いけどねぇ」
「さっき叔母さん軍警と話した時に何か貰っただろ
”何か”じゃないな。例えば・・・毒薬とか?」
その一言で依頼主さんの表情が歪んだ。
僕でも判った。
この人が犯人だ、と。
依頼主は黙ってポケットから錠剤を取り出し、
ゆっくりと其れを見つめ呟くように
「貴方は何でも判っちゃうのね・・・」と言った。
_______________刹那、彼女は錠剤を口に放り込む
一瞬のことだった。
一瞬すぎて頭で追い付かない。
だけどガタンっと音を立てて倒れガクガクと痙攣を
起こす依頼主を見て状況がやっと理解出来た。
「拙いぞ?!」
「早く救急車・・・」
「退きな!妾が治療する。」
凛とした声色を響かせた与謝野さんは周りの警察官を退かし、彼女に駆け寄った。
善かった、与謝野さんが居るからもう大丈夫だ。
僕は安心して溜息を吐く。
確かその数秒後だった筈だ。
銃声の様な乾いた音が響いたのは。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。