taehyung story
ドアを思い切り叩いたような
そんな感じの音が耳に入った
どこからだろうと首を回したとき
自分の手がヒリヒリと痛みを訴えた
... もしかして、叩いたのは自分だったか .
途端に反吐が出そうだ .
なんだこれ、
思ったこと全部が口から溢れ出てきそう .
ドアと俺に挟まれた紗夏が
キョトンとこちらを見つめている
わかってなさそうなその様子に
ただただ苛立ちを覚える
自分もわかってないくせに、笑える .
「 自分でも、わかんないんだよ 」
そんな言葉を隠して
縋るような思いで捲し立てる
少しの沈黙が辺りを走ったあと
ため息をついて話し出したのは紗夏だった
やっぱり、居心地がいいな .
暗かった雰囲気は消え
もとの空気が戻っている
「 って言ってペース落としてんじゃん 」
「 まぁね、面白いから 」
なんて軽口をたたき合いながら
並んで歩くふたりの足は明るい .
燦々と光を振りまく太陽は
歪な雲や窓に隠れて泰亨だけを照らす
ふたりのある廊下には
真っ黒な影が映し出されていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。