第16話

らしくない
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2023/05/14 13:12



 taehyung story



 いつも通り授業を自分なりに受けて
 先生に反省文を書かさていると
 放課後を告げるチャイムがなった

 400字詰めの原稿用紙に大きく
 " すみませ ~ ん " という文字のみ
 大きく書いて指導室を出る

 一年生の頃はほぼ毎日こうしていたものだから
 先生も無駄だとわかったのだろう、
 反省文のペースは一ヶ月に一回ほどに減った

 反抗心と努力が功を奏したのだ


_泰亨@てひょん_
泰亨てひょん
 せんせー、これ .
今回もしっかり書きましたよ



 「 はいはい、毎度ごくろーさま .
  心意気と粘り強さだけは買うわ 」

 多様性のある素敵な先生だ .

 ひどー、と軽く笑いながら
 軽く会釈して職員室を去る


 向かう先は別館の
 ほんの端くれにある小さな部屋

 もとは個人面談室という
 使われていないが設備の整ったものだった

 夏を快適にするエアコンに
 人をダメにするクッションが
 俺を呼んでいる

 別館への長い道のりを歩く足は不思議と軽い .

 体育館の近くを通ると
 明るく楽しげな声が聞こえた

 床と擦れて窓を拭くような音は
 バレー部か .

 次はいつ顔を出してやろうかと思案していたら
 ふと耳に高く綺麗なソプラノが入ってきた


_子瑜@つうぃ_
子瑜つうぃ
 お疲れさまです ~ 今のプレー最高でした!
_子瑜@つうぃ_
子瑜つうぃ
 スポドリいりますか?
空中姿勢 凄く綺麗で見蕩れちゃいました 笑



 もし バレー部所属だったら
 あのソプラノを独占できたのだろうか .

 俺以外の誰も気にならないように
 誰ひとりとして興味をもたないように ─── ⋯


 そこまで考えて、我に返った

 出会ったばかりの新入生に
 自分はなにを考えているのだろうか .


_泰亨@てひょん_
泰亨てひょん
 どーしたんだよ、俺 ... 
_紗夏@さな_
紗夏さな
 ほんと " らしく " ないね 〜 



 急に後ろから声がして振り返ると紗夏がいた

 紗夏も反省文を書き終えたのだろうか .

 俺が「 すみませ ~ ん 」と書くなら
 「 申し訳ありませ ~ ん 」 と書く女だ


_泰亨@てひょん_
泰亨てひょん
 っわ、びっくりした .
なんだよお前 居たなら言えよ
_紗夏@さな_
紗夏さな
 ははっ 笑
子瑜ツウィちゃんに、ご執心?
_泰亨@てひょん_
泰亨てひょん
 ...... かもな .
だったらなんだよ
_紗夏@さな_
紗夏さな
 いや、青いなぁと思って 
_紗夏@さな_
紗夏さな
 あの子かわいいもんね 〜
私も好きだなぁ .
守りたくなるっていうか ...



 紗夏が言葉を続けようとしたとき
 バン、と大きな音がした





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