taehyung story
いつも通り授業を自分なりに受けて
先生に反省文を書かさていると
放課後を告げるチャイムがなった
400字詰めの原稿用紙に大きく
" すみませ ~ ん " という文字のみ
大きく書いて指導室を出る
一年生の頃はほぼ毎日こうしていたものだから
先生も無駄だとわかったのだろう、
反省文のペースは一ヶ月に一回ほどに減った
反抗心と努力が功を奏したのだ
「 はいはい、毎度ごくろーさま .
心意気と粘り強さだけは買うわ 」
多様性のある素敵な先生だ .
ひどー、と軽く笑いながら
軽く会釈して職員室を去る
向かう先は別館の
ほんの端くれにある小さな部屋
もとは個人面談室という
使われていないが設備の整ったものだった
夏を快適にするエアコンに
人をダメにするクッションが
俺を呼んでいる
別館への長い道のりを歩く足は不思議と軽い .
体育館の近くを通ると
明るく楽しげな声が聞こえた
床と擦れて窓を拭くような音は
バレー部か .
次はいつ顔を出してやろうかと思案していたら
ふと耳に高く綺麗なソプラノが入ってきた
もし バレー部所属だったら
あのソプラノを独占できたのだろうか .
俺以外の誰も気にならないように
誰ひとりとして興味をもたないように ─── ⋯
そこまで考えて、我に返った
出会ったばかりの新入生に
自分はなにを考えているのだろうか .
急に後ろから声がして振り返ると紗夏がいた
紗夏も反省文を書き終えたのだろうか .
俺が「 すみませ ~ ん 」と書くなら
「 申し訳ありませ ~ ん 」 と書く女だ
紗夏が言葉を続けようとしたとき
バン、と大きな音がした
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。