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第20話

20話 重なる夢、歩き出す未来
2,878
2020/08/12 09:00
あなた

やっと、私たちの道が重なった

その姿を見た途端、
ぶわっと涙が溢れてしまう。

そう、私の今日の仕事は、
『Passion Bomb』の新曲の作詞をすること。
あなた

みんなに追いつけて、よかった

轟 烈歌
轟 烈歌
号泣だな、あなた
困ったように笑って、
烈歌くんが私の涙を唇で掬っていく。
轟 烈歌
轟 烈歌
お前に会ったら、いちばんに
言おうと思ってたことがある
あなた

私も……。同時に言おっか

せーの、と私たちは口を開く。
轟 烈歌
轟 烈歌
俺の女になれ
あなた

私の彼氏になって下さい

やっぱり、と私たちは吹き出す。
轟 烈歌
轟 烈歌
やっと、手に入った
烈歌くんはしみじみとそう言って、
私を強く抱きしめた。
轟 烈歌
轟 烈歌
随分、待ったぞ
あなた

ごめんね

烈歌くんの胸に顔を埋めて、
私はようやく恋人として
触れられた幸せを噛みしめる。
あなた

ありがとう。あのとき、
私の背中を押してくれて、
今日まで待っててくれて……

轟 烈歌
轟 烈歌
当たり前だろ。俺はお前も、
お前の詞も好きだからな。
あなたが成長したいって思う気持ちを
邪魔したくなかった
あなた

うん、その気持ちが
うれしかった

轟 烈歌
轟 烈歌
じゃ、これからは思う存分、
あなたを好きなようにして
いいってことだな
あなた

へ!?

ニヤニヤしながら、
烈歌くんが顔を近づけてくる。

そのまま、唇を軽く噛まれた。
轟 烈歌
轟 烈歌
ここ、うまそう。
果物みたいだな
あなた

き、キスしながら喋らないで

轟 烈歌
轟 烈歌
なんで? 気持ちよくない?
あなた

なんでも!

あなた

(烈歌くん、本能に忠実なところは、
全然変わってない!)

私が烈歌くんの胸を押し返していると、
そこへ──。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
お前はTPOをわきまえろ
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
抜け駆けを許したつもりはない
ぞろぞろと、
みんながスタジオに入ってくる。
あなた

みんな!

私は烈歌くんの腕の中から、
みんなのほうに顔を向けた。
轟 烈歌
轟 烈歌
邪魔すんなよ
奏 音波
奏 音波
僕たちもここで仕事なんだから、
邪魔もなにもないでしょ
真宙 弾
真宙 弾
烈歌先輩、ひとりだけ
先に走って行っちゃうから、
追いかけるの大変だったんだ
弾くんが、そう私に耳打ちする。
あなた

ふふ、そうだったんだ

あなた

(この賑やかな空気、
3年も経ったのに、
全然変わってないな)

それにほっとして、
また涙ぐんでしまう。

吹賀谷 響
吹賀谷 響
お帰り、あなた
奏 音波
奏 音波
なに泣いてんの。
僕たち、これからはずっと一緒に
いられるんだから、悲しいことなんて
なにもないでしょ
あなた

響先輩、音波先輩……

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
今のあなたがどんな詞を書くのか、
早く見せろ
真宙 弾
真宙 弾
また一緒に活動できてうれしいよ。
頑張ろうな!
あなた

弦くん、弾くん……

次々とかけられる言葉。

私の居場所はここにあるのだと、
そう実感する。
轟 烈歌
轟 烈歌
これから、俺たちと駆け抜ける
覚悟はできてるな?
私を見下ろす、大好きな人の瞳。

そこには、相変わらずみんなを魅了して、
新しい世界へと連れだしてくれる
情熱の炎が宿っている。
あなた

(あなたに出会ったから、
私は今ここにいる。
みんなとも仲間になれた──)

だから迷わず、私は首を縦に振る。
あなた

うん! これから、よろしく
お願いします!

──別れた道が、再び交わる。
みんなとなら、どこまでも行ける。

──ここが、私たちの夢の始まりだ。

END

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