その姿を見た途端、
ぶわっと涙が溢れてしまう。
そう、私の今日の仕事は、
『Passion Bomb』の新曲の作詞をすること。
困ったように笑って、
烈歌くんが私の涙を唇で掬っていく。
せーの、と私たちは口を開く。
やっぱり、と私たちは吹き出す。
烈歌くんはしみじみとそう言って、
私を強く抱きしめた。
烈歌くんの胸に顔を埋めて、
私はようやく恋人として
触れられた幸せを噛みしめる。
ニヤニヤしながら、
烈歌くんが顔を近づけてくる。
そのまま、唇を軽く噛まれた。
私が烈歌くんの胸を押し返していると、
そこへ──。
ぞろぞろと、
みんながスタジオに入ってくる。
私は烈歌くんの腕の中から、
みんなのほうに顔を向けた。
弾くんが、そう私に耳打ちする。
それにほっとして、
また涙ぐんでしまう。
次々とかけられる言葉。
私の居場所はここにあるのだと、
そう実感する。
私を見下ろす、大好きな人の瞳。
そこには、相変わらずみんなを魅了して、
新しい世界へと連れだしてくれる
情熱の炎が宿っている。
だから迷わず、私は首を縦に振る。
──別れた道が、再び交わる。
みんなとなら、どこまでも行ける。
──ここが、私たちの夢の始まりだ。
END
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!