第15話

15話 弦くんの爆弾発言
奏 音波
奏 音波
……あのさ、
烈歌と弦は仲直りした?
名前を呼ばれた感動に浸っていると、
おずおずと音波先輩が尋ねてくる。

あなた

あー……たぶん、まだです

奏 音波
奏 音波
じゃあさ、きみが話を聞いて
あげてよ。きっかけがないと、
プライドが邪魔して、お互い
歩み寄れないくらい頑固だし
あなた

音波先輩、こんなときに
メンバーの心配して、
優しいんですね

奏 音波
奏 音波
べ、別にそういうんじゃない。
僕はただ、みんなの音をまた
聞きたいだけ。静かすぎるのは、
好きじゃないから
あなた

(それはきっと、この広い家で
ひとりで過ごしてきた寂しさを、
みんなが埋めてくれたから
なんだろうな)

強がりで、繊細な音波先輩の心の音が
聞こえてくる気がする。
あなた

音波先輩は、
ひとりじゃありません

その手をとれば、すごく熱い。

先輩は繋がれたそれを引っ込めようと
したけれど、私は強く握って離さなかった。
奏 音波
奏 音波
なんなの、急に
あなた

みんながいます。
先輩が静けさに耐えられなくなったら、
いつだって駆けつけて、
どんちゃん騒ぎしてくれるはずです

奏 音波
奏 音波
あなた……確かに、やりかねないよね
烈歌たちなら
あなた

ふふっ、ですよね

奏 音波
奏 音波
……ありがとう
あなた

え?

奏 音波
奏 音波
励ましてくれたんでしょ
あなた

私のためです。
音波先輩の寂しそうな顔を見ると、
胸が痛いので

奏 音波
奏 音波
結局それ、僕のためになってるから。
だから、ありがと
ぼそりと、早口でそう言って、
音波先輩は『それ』と私の手の中にある
お粥の器を指差す。
奏 音波
奏 音波
お腹空いたんだけど。
早くちょーだい
あなた

あ──はい、ただいま!

奏 音波
奏 音波
なんでうれしそうなの
あなた

音波先輩に頼って
もらえたからです!

奏 音波
奏 音波
へ、変なの
あなた

変でもなんでもいいです。
お世話を焼かせていただけるなら!

奏 音波
奏 音波
あ、そ。
じゃあ、遠慮なく
こき使わせてもらうから
あなた

はい!

私は音波先輩にお粥を食べさせながら、
強く思う。
あなた

(弦くんと烈歌くんに教えてあげよう。
ふたりがどれだけ、
みんなに思われてるのか)

***

私はキッチンを借りて焼いた
クッキーとコーヒーを持って、
防音室を訪ねる。

中には弦くんだけがいた。
あなた

差し入れです

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
なんで急に
あなた

話がしたくて

素直にそう伝えれば、
弦くんは壁に背を預けるようにして床に座る。

私も、その隣に腰をおろした。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
ギターを弾いてるときは、
頭ん中空っぽになるから、
冷静になれる
あなた

じゃあ、気持ちは落ち着いた?

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
ああ、あいつの言うことは
間違ってない。文化祭なら、
盛り上がりが必要だろうからな
あなた

響先輩の言ったとおりだ。
ふたりは、時間を置けば
冷静になって、歩み寄れるって

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
今さら、喧嘩したくらいで
決別したりしない。中1からの
付き合いだからな、烈歌とは
あなた

どんなふうに出会ったの?

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
入学初日に、
同じクラスで隣の席になった
あなた

初日から! 
運命の出会いだね

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
ある意味な。でも、あいつと
俺は性格が真反対だろ。
派手好きなあいつの隣の席になって、
最悪だと思った
あなた

(ははは……イライラしてる
弦くんの姿が目に浮かぶな)

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
俺はひとりで
ギターを弾いてるほうが
落ち着くっていうのに、あいつは
俺がギターやってることを知って、
無理やり軽音部に誘ってきた
あなた

ふふっ、最初は
私もそうだったな

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
でも、烈歌の歌に惚れた。
あいつの歌は、心に火を灯す。
俺はその力をもっと膨らませて、
聞き手に届けたい
あなた

弦くんは、誰よりも烈歌くんの
歌が好きなんだね

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
……俺は、なんでべらべらと
こんなことを話してるんだ。
お前相手だと、簡単に本心を暴かれる
目を逸らし、前髪をくしゃりと握る
弦くんは珍しく照れていた。
あなた

私は、弦くんのことを
知れてうれしい

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
……お前のそういうところ、
ときどき憎らしくなる
あなた

え! 気分悪くしちゃったのなら、
ごめんなさい

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
違う、逆だ
弦くんがずいっと顔を近づけてくる。
あなた

(な、なに!?)

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
お前の言葉にハラハラ
させられるのが、
快感になりつつある
あなた

──は!?

あなた

(か、快感!?)

弦くんらしからぬ言葉に、
私が硬直していると……。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
……忘れろ
すぐに私から離れて、
ギターを手に立ち上がる。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
もう少し練習したら、
あいつとも話す
あなた

わ、わかった。
じゃあ、私は出ていくね

返事はなかったが、
私は部屋を出る。

それから、はーっと息を吐いた。
あなた

(あんなこと言われて、
忘れられるわけないよ!)