私は家族に軽音部に入りたいことを話したら、
頭ごなしに怒られたことを打ち明ける。
嗚咽が込み上げてきて、
ポロッと瞳から涙がこぼれ落ちる。
慰めるように、
烈歌くんの手が私の頭を撫でた。
私は作詞ノートを開き、
破れたページに手を添える。
泣きながら失ってしまったものの
大きさに打ちひしがれる。
名前を呼ばれ、私は顔を上げる。
すると、強気な笑みに出会う。
目を瞬かせると、
烈歌くんが先に立ち上がって、
私の手を掴む。
***
部室にやってくると、
弾くんが真っ先に駆け寄ってきた。
音波先輩はキーボードの前に、
弾くんはドラムの前に座る。
口数の少ないイメージだった
弦くんが饒舌にそう言うと、
ギターを肩にかけ、
わずかに口端を上げた。
響先輩がベースを構えると、
烈歌くんはメロディーを口ずさみ始める。
それに同調するようにドラムのリズムが入り、
キーボードの旋律が乗る。
ジャーンとギターが添えられると、
すべてを支えるようにベースの音が鳴った。
最後に、私が失くした詞が乗り、
ここに歌が誕生する。
歌は紙ではなく、人の心に宿る。
それを目の当たりにした気分だった。
歌い終えると、
烈歌くんが近づいてくる。
烈歌くんが自分の胸を指差す。
守る、という言葉の意味を理解したとき、
感動の波が押し寄せてくる。
ちょっとショックを受けていると、
弾くんが慌てたように
顔の前で手を振る。
みんなのやりとりを見ていたら、
ついクスッと笑ってしまう。
みんなといると、
楽しい気持ちが勝る。
頬を赤く染めて、ぷいっと
そっぽを向いてしまう先輩に
目を瞬かせていると──。
響先輩がぽんっと私の肩に手を置き、
後ろを振り返る。
響先輩に促されて、
渋々と言った様子で弦くんが口を開く。
素っ気なく答えて、顔を背ける弦くん。
心なしか耳が赤いような気がしたのは、
気のせいだろうか。
最後に私を焚きつけてくれるのは、
やっぱり烈歌くんだ。
***
──その日の夜。
夕食の時間を狙って、
私はさっそく、お父さんとお母さんに
気持ちを伝えた。
軽い足取りで部屋に戻り、
私は烈歌くんにメッセージを送って
結果を伝える。
連絡先は部室に行ったときに
みんなと交換した。
──プルルルルッ。
ややあって、
なぜか烈歌くんから電話がかかってきた。
自分のことのように喜んでくれる
烈歌くんに胸が温かくなる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。