第6話

6話 ずっと守り続けてやる
私は家族に軽音部に入りたいことを話したら、
頭ごなしに怒られたことを打ち明ける。
あなた

そのときに、
歌詞も破られ……ちゃって

嗚咽が込み上げてきて、
ポロッと瞳から涙がこぼれ落ちる。
轟 烈歌
轟 烈歌
親が子供の将来まで
決める権利ねえってのに
慰めるように、
烈歌くんの手が私の頭を撫でた。
あなた

お父さんとお母さんにとっては
くだらないものでも……

私は作詞ノートを開き、
破れたページに手を添える。
あなた

私にとっては、
命と同じくらい大切なものなのに、
消えちゃった……っ

泣きながら失ってしまったものの
大きさに打ちひしがれる。
轟 烈歌
轟 烈歌
魂削って作ったもんを壊すとか、
すげえ許せねえ。
けど、あなた
名前を呼ばれ、私は顔を上げる。

すると、強気な笑みに出会う。
轟 烈歌
轟 烈歌
まだ、消えたと思うのは早いぞ
あなた

え……?

あなた

(どういう意味?)

目を瞬かせると、
烈歌くんが先に立ち上がって、
私の手を掴む。
轟 烈歌
轟 烈歌
部室行くぞ
***
真宙 弾
真宙 弾
あ、あなた先輩だ!
入部決めたのか?
部室にやってくると、
弾くんが真っ先に駆け寄ってきた。
轟 烈歌
轟 烈歌
その話はあとだ。
今から俺が口ずさんだ曲、
即興で演奏しろ
奏 音波
奏 音波
相変わらず滅茶苦茶だね
真宙 弾
真宙 弾
でも俺、そういうの
嫌いじゃないっすよ!
音波先輩はキーボードの前に、
弾くんはドラムの前に座る。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
即興だろうが、望むところだ。
お前の想像を遥かに超える音、
聞かせてやる
口数の少ないイメージだった
弦くんが饒舌にそう言うと、

ギターを肩にかけ、
わずかに口端を上げた。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
烈歌の思いつきは
いつも突拍子ないが、俺たちを
わくわくさせてくれるからな。
どこまでもついて行こう
響先輩がベースを構えると、
烈歌くんはメロディーを口ずさみ始める。

それに同調するようにドラムのリズムが入り、
キーボードの旋律が乗る。

ジャーンとギターが添えられると、
すべてを支えるようにベースの音が鳴った。
轟 烈歌
轟 烈歌
──世界のどこかで泣いてる
きみを見つけ出して
最後に、私が失くした詞が乗り、
ここに歌が誕生する。
あなた

そっか……

あなた

(破られて消えてしまったと
思ってた詞。それは烈歌くん
たちの中に残るんだ)

歌は紙ではなく、人の心に宿る。

それを目の当たりにした気分だった。
轟 烈歌
轟 烈歌
──わかったか、あなた
歌い終えると、
烈歌くんが近づいてくる。
轟 烈歌
轟 烈歌
お前の詞は、
俺たちのここに刻まれてる
烈歌くんが自分の胸を指差す。
轟 烈歌
轟 烈歌
だから消えてなんてねえよ。
つーか、誰にも奪えない。
俺たちがずっと守り続けてやる
あなた

(烈歌くんたちが
私の詞を忘れない限り、
ずっとこの世界に残るんだ)

守る、という言葉の意味を理解したとき、
感動の波が押し寄せてくる。

あなた

(私の大事なものを
一緒に守ってくれる。
そんなこの人たちの一員に
なりたい)

あなた

私、もう一度、家族に伝える。
入部したいって

真宙 弾
真宙 弾
おおっ、頑張れよ先輩!
奏 音波
奏 音波
なんで上から目線?
あとさ、弾ってあなたと
話すときだけ、敬語じゃないよね
轟 烈歌
轟 烈歌
ああ、あの体育会系の
『なんとかっす』みたいな口調な
真宙 弾
真宙 弾
あ、なんかあなた先輩
相手だと、つい敬語を忘れて……
あなた

それって、
私に威厳がないってこと……かな?

ちょっとショックを受けていると、
弾くんが慌てたように
顔の前で手を振る。
真宙 弾
真宙 弾
ち、違う違う!
守ってあげないと!っていう
男心だよ!
吹賀谷 響
吹賀谷 響
お前たち、励ますなら
ちゃんと励まさないか。
話が逸れてるぞ
みんなのやりとりを見ていたら、
ついクスッと笑ってしまう。
あなた

(不思議。さっきまで
あんなに辛かったのに)

みんなといると、
楽しい気持ちが勝る。
奏 音波
奏 音波
その調子で笑ってれば?
気合い入れすぎても、
余計に緊張するでしょ
あなた

音波先輩……
ありがとうございます

奏 音波
奏 音波
……別に。
お礼言われるようなこと、
してないから
頬を赤く染めて、ぷいっと
そっぽを向いてしまう先輩に
目を瞬かせていると──。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
大丈夫だ。お前の両親だろう。
話せば気持ちも伝わる
あなた

そうです……よね。
うん、そんな気がしてきました

吹賀谷 響
吹賀谷 響
その調子だ
響先輩がぽんっと私の肩に手を置き、
後ろを振り返る。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
弦、お前からも
なにかないのか
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
…………
響先輩に促されて、
渋々と言った様子で弦くんが口を開く。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
……自分の道は自分で切り開け
あなた

弦くんの言葉を聞くと、
シャキッとしなきゃって、
そう思えるよ

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
……っ、あっそ
素っ気なく答えて、顔を背ける弦くん。

心なしか耳が赤いような気がしたのは、
気のせいだろうか。
轟 烈歌
轟 烈歌
負けんなよ、あなた

最後に私を焚きつけてくれるのは、
やっぱり烈歌くんだ。
あなた

うん! 負けないよ!
みんなも、ありがとう!

***

──その日の夜。

夕食の時間を狙って、
私はさっそく、お父さんとお母さんに
気持ちを伝えた。
お母さん
お母さん
まだそんなこと言ってるの?
お父さん
お父さん
その話は、昨日終わった
はずだろう
あなた

でも、どうしてもやりたいの。
成績は落とさないから、
部活に入らせて

お母さん
お母さん
……珍しいわね、
あなたがそんなふうに
食い下がるの
お父さん
お父さん
そこまで言うのなら、
条件がある。次のテストで
オール95点以上取れ
あなた

え、それをクリアしたらいいの?

お父さん
お父さん
結果を出せれば、
ある程度の自由は認めよう
あなた

あ、ありがとう!

あなた

(絶対にダメだって
言われると思ってたのに……。
うれしい!)

軽い足取りで部屋に戻り、
私は烈歌くんにメッセージを送って
結果を伝える。

連絡先は部室に行ったときに
みんなと交換した。

──プルルルルッ。

ややあって、
なぜか烈歌くんから電話がかかってきた。
あなた

もしもし

轟 烈歌
轟 烈歌
やったな、あなた
あなた

うん、烈歌くんたちが
背中を押してくれたおかげだよ

轟 烈歌
轟 烈歌
違うだろ。あなたが逃げずに
戦った結果だって。なんにせよ、
明日から忙しくなんぞ
あなた

え?

轟 烈歌
轟 烈歌
俺たちの歌、
ばんばん書いてくれるんだろ? 
すげえ楽しみ
あなた

あ……ふふ、うん!

自分のことのように喜んでくれる
烈歌くんに胸が温かくなる。
あなた

(頑張ろう。私を必要としてくれた
烈歌くんたちを輝かせられるように)