第14話

14話 リズムと旋律
あなた

うん、だから……。
早くみんなと楽しい音楽、
作りたいね

真宙 弾
真宙 弾
そうだな。そのためにも、
俺はみんなを輝かせられるように
リズムを刻むだけだ
あなた

(弾くんと響先輩はメンバーを
支えたいって心から思って、
音楽をやってるんだな)

それはベースとドラムという、
バンドを支える彼らの楽器の
役割にも似ていた。
真宙 弾
真宙 弾
それが俺にできることで、
したいことだからさ
そう語ってくれた弾くんの顔は、
言葉通り輝いていた。
あなた

弾くんの気持ち、すごくわかるよ。
私も、みんなをキラキラさせられる
ような詞を書きたいって思ってるから

真宙 弾
真宙 弾
俺たち、同士だな!
あなた

ふふっ、本当にね。
だけど、私がキラキラさせたい
人の中には、弾くんも入ってるんだからね

真宙 弾
真宙 弾
俺?
あなた

そう。私は弾くんの音が好き。
だからもっともっと誰かの心に
届くように、言葉をのせるの

真宙 弾
真宙 弾
そっか、好き……か
頬を赤く染めながら、
はにかむ弾くん。

頭を掻きながら、
眩しいものでも見つめるような目を
私に向けてくる。
真宙 弾
真宙 弾
俺も、先輩の包み込むような
優しさっていうんかな。
その……好きだ
あなた

(好き……他意はないってわかってるけど、
ちょっとドキドキしちゃったな)

真宙 弾
真宙 弾
頑張ろうぜ、先輩!
あなた

うん、私たちは私たちに
できることをしよう

***

音波先輩の家に戻ると、
響先輩がお粥をどこかへ
運ぼうとしているところに遭遇する。
真宙 弾
真宙 弾
響先輩、それなんすか?
吹賀谷 響
吹賀谷 響
音波が風邪をひいた
あなた

え! 病院に行かなくて
大丈夫ですか?

吹賀谷 響
吹賀谷 響
本人が頑として行かないと
言い張っててな
真宙 弾
真宙 弾
じゃあ俺、薬買ってくるっす!
吹賀谷 響
吹賀谷 響
帰ってきたばっかりなのに、
悪いな
あなた

私もなにか手伝います!

吹賀谷 響
吹賀谷 響
助かる。じゃあこれを
音波に運んでやってくれるか?
私は響先輩からお粥の載った
お盆を受け取り、
音波先輩の部屋に行く。

──トンットンッ。
あなた

入ってもいいですか?

ノックをしてから声をかけると、
すぐに返事があった。
奏 音波
奏 音波
どうぞ
中に入れば、顔が真っ赤な音波先輩が
ベッドの上にいた。

上半身を起こそうとしていたのだが、
力が入らないのか、
その動きはゆっくりだ。
あなた

音波先輩! 手伝いますから!

私は急いでナイトテーブルにお盆を置き、
音波先輩の背中に手を添えて、
起きるのを手伝う。
あなた

(背中、熱い。辛そうだし、
ご飯もひとりで食べられなさそう)

奏 音波
奏 音波
もう大丈夫だから、部屋出て。
うつるよ、風邪
あなた

こんな音波先輩を
置いていけません

私はベッドの端に腰かけると、
音波先輩の口元に掬った
お粥を近づける。
奏 音波
奏 音波
正気?
あなた

え? はい。だってその調子だと、
スプーン持つのも辛そうだなって

奏 音波
奏 音波
…………
図星だったのか、
音波先輩は黙り込む。
あなた

猫舌なら、ちゃんと冷ましますから。
ふーふー……はい、どうぞ

奏 音波
奏 音波
そうじゃないんだけど……はあ。
まあいいや
音波先輩は観念した様子で、
お粥を食べてくれた。
あなた

響先輩が作ったので、
味は折り紙つきです

奏 音波
奏 音波
ん、おいしい
スプーンを近づけると
音波先輩は素直に口を開き、
黙々と食べてくれる。
あなた

(なんだか、素っ気ない猫が
やっと懐いてくれた、みたいな気分)

あなた

薬は弾くんが
買いに行ってくれてます

奏 音波
奏 音波
そう、あとで
お礼……しないと
あなた

あの、ご両親に
連絡しましょうか?

奏 音波
奏 音波
風邪程度で? 迷惑でしょ
あなた

え……そんな、
風邪は一大事ですよ!

奏 音波
奏 音波
絶対に連絡しないで。
俺よりも演奏会のほうが大事
そう言った音波先輩は、
強い眼差しをしていた。
奏 音波
奏 音波
あの人たちがどれだけ音楽を
愛してるのか知ってるからこそ、
僕なんかのことで邪魔したくない
あなた

音波先輩の気持ちはわかりました。
けど、"僕なんか"、なんて
過小評価だと思います

奏 音波
奏 音波
なにがわかるの、きみに
あなた

うちの親は、私の将来を
勝手に決めたがるところがあって

奏 音波
奏 音波
ああ、部活入るのにも
苦労してたっけ、きみ
あなた

はい。正直、息苦しいと
思ったりもするんですが、
でも……

あなた

(愛情がないわけじゃない)

あなた

私の将来を心配してるからこその
行動だと思ってます。
どんなにひどいことをされても、
親には変わりないんです

行き過ぎていても、
そのすべてを否定したいとは
思わないのだ。

それがきっと、家族の情──。
あなた

だから、音波先輩になにかあったら、
ご両親もきっと心配するはずです

奏 音波
奏 音波
……変わってる、あなたって
あなた

え……

あなた

(今、初めて名前を呼ばれた!)