第16話

16話 アクシデント・キス
激しく音を立てる胸を押さえながら、
気持ちを静めるために庭に出る。
轟 烈歌
轟 烈歌
おいっ、やめろよ。
重いだろ!
あなた

(──あ、烈歌くんが
ワンちゃんと戯れてる……)

近寄ると、ワンちゃん──
それもゴールデンレトリバーが
私の存在に気づいて飛びついてきた。
あなた

うわっ

あなた

(支えきれない!)

勢いよく乗っかられて、
背中から転んでしまう。
あなた

痛たた……

轟 烈歌
轟 烈歌
あなた! 大丈夫かよ?
あなた

うん、なんとか

あなた

(庭が芝生でよかった)

轟 烈歌
轟 烈歌
掴まれよ
助け起こしてもらうと、
私は烈歌くんと並んで
芝生の上に座った。
あなた

ずっと庭にいたの?

轟 烈歌
轟 烈歌
頭を冷やすためにな
あなた

(弦くんと一緒だ。
本当、似た者同士なんだな)

轟 烈歌
轟 烈歌
弦は自分の届けたい気持ち
だけじゃなくて、相手がなにを
求めてるのかを考えられるやつだ
弦くんを褒める烈歌くんの
表情は柔らかく、先ほどの喧嘩を
引きずっているようには見えない。
轟 烈歌
轟 烈歌
だから、あいつが正しいって
わかってるんだけどな
烈歌くんの口元に嘲笑が浮かぶ。
轟 烈歌
轟 烈歌
お互い熱くなるから、
喧嘩ばっかになるんだけどよ
あなた

喧嘩は、したっていいんじゃ
ないのかな?

轟 烈歌
轟 烈歌
……なんでだ?
あなた

それだけ、真剣な気持ちを
ぶつけ合ってるってことだから

烈歌くんはじっと私の話に
聞き入っている。
あなた

適当に『うんうん』って頷いて
穏便に済ませようとするより、
誠実だと思う

あなた

……!

烈歌くんは目を見張った。
あなた

弦くん、烈歌くんの歌は、
心に火を灯すんだって言ってたよ。
その力をもっと膨らませて、
聞き手に届けたいんだって

轟 烈歌
轟 烈歌
じゃああいつは、
俺のために怒ってたのか
あなた

お互いに認め合ってるって素敵だね。
ぶつかったりくっついたりを繰り返して、
今の関係があるんでしょう?

轟 烈歌
轟 烈歌
違いねえ
烈歌くんが立ち上がる。

私もあとに続こうとしたのだが、
足がもつれてふらついた。
あなた

きゃっ

烈歌くんを巻き込んで、
私は芝生の上に倒れてしまう。

咄嗟に目を瞑って、
衝撃に耐えようとしたのだが……。
あなた

(あれ? 痛く……ない?)

そっと瞼を持ち上げると、
眼前に烈歌くんのシャツが見える。
あなた

(私、烈歌くんを
押し倒しちゃったんだ!)

申し訳ないやら、恥ずかしいやらで、
私はすぐに体勢を起こす。
あなた

ご、ごめんね

轟 烈歌
轟 烈歌
平気、だ……
あなた

あっ

あなた

(烈歌くんの顔が目の前に!)

あまりの距離の近さに、
私たちは息を呑む。

やがて、烈歌くんの手が
後頭部に回り……。
あなた

んっ

引き寄せられるように、
キスされた。

***
あなた

ど、どうしよう

キスのあと、
私は逃げるように
自分の部屋に帰ってきた。
あなた

どうしよう!

ドキドキしながら、
ベッドに突っ伏す。
あなた

(烈歌くん、なんであんなことを?
本能で生きてる人だし、
ただしたかったから、しただけ?)

どうにもこうにも落ち着かず、
私は作詞ノートを枕の上に広げ、
シャーペンを握る。
あなた

気持ちを整理するためにも、
歌詞を書こう

あなた

(このドキドキも、
きっと歌詞のスパイスになるはず)

そう考えてしまう私も、
相当な音楽バカなのかもしれない。
あなた

みんなが輝けて、
烈歌くんの歌がもっともっと
たくさんの人の心を打つ歌詞を──

部屋にこもって、
黙々と書くこと数時間──。

冴えに冴え渡った頭のおかげで、
作詞が終わる。
あなた

(こんなに早く書きあげたの、
初めてかも)

できあがった歌詞を眺めて満足していると、
部屋をノックされる。
あなた

どうぞ

中に入ってきたのは……。
轟 烈歌
轟 烈歌
今、いいか