第3話

3話 身体の芯から火照らせてやる
吹賀谷 響
吹賀谷 響
烈歌、女の子に対していきなり
なにをする
私を庇うように背に隠し、
響先輩は烈歌くんの前に仁王立ちする。
轟 烈歌
轟 烈歌
俺の心を揺さぶった女だぞ。
触れて、愛でたいって気持ちに
素直になっただけだ
あなた

(愛でたい!? なんで??
私、烈歌くんに気に入られる
ようなこと、した覚えないのにっ)

吹賀谷 響
吹賀谷 響
……はあ、話にならんな
開き直る烈歌くんに、
響先輩はため息をついた。

それから私を振り返り、
申し訳なさそうな顔をする。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
悪いな。あいつはこの通り、
本能と衝動で生きてる獣なんだ
あなた

いえ、響先輩が悪いわけじゃ……

あなた

(獣……。
納得してしまう自分がいる)

吹賀谷 響
吹賀谷 響
俺がこの『Passion Bombパッション ボム』の
バンドリーダーだから、
なにかあったら相談してくれ
あなた

(Passion Bomb……。
意味は情熱爆弾、かな?)

あなた

はい、ありがとうございます

吹賀谷 響
吹賀谷 響
責任を持って用心棒に
なるからな
あなた

(1学年上なだけなのに、
この安心感……。響先輩のこと、
つい『お父さん』って呼んじゃいそう)

そんなことを考えていると──。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
そんな不安そうな顔をするな
ふいうちで先輩の大きな手が
私の頭の上に乗る。
あなた

わっ

吹賀谷 響
吹賀谷 響
すまない、驚かせたか。
こいつらにもよくしてるから、
つい癖でな
あなた

あ、いえ。いきなりだったので
ちょっと驚いてしまっただけで、
その……慣れるよう努力します

吹賀谷 響
吹賀谷 響
努力って……くっ、はは
あなた

え……っと?

あなた

(なんで私、笑われてるの!?)

吹賀谷 響
吹賀谷 響
そんなことに慣れなくていい。
俺が配慮に欠けていただけだ。
軽々しく触れて申し訳ない
あなた

配慮に欠けてたなんて……。
先輩と話しているとほっとしますし、
できればみなさんと同じように
接してもらえるとうれしいです

あなた

(烈歌くんと違って、
響先輩は紳士なんだな)

轟 烈歌
轟 烈歌
へえー。響先輩のことは
突き飛ばさないんだな
あなた

ひゃっ

突然、耳元に息を吹きかけられ、
変な声がでてしまった。
轟 烈歌
轟 烈歌
妬けるな
あなた

もう、烈歌くん!
いきなりなにするのっ

耳を押さえながら抗議していたら、
どこからかため息が聞こえてくる。
奏 音波
奏 音波
それで? 烈歌はこの子に
なにをさせる気なの
音波先輩だ。
呆れるように私たちを見ている。
轟 烈歌
轟 烈歌
ああ、文化祭で演奏する
オリジナルソングの歌詞、
あなたに頼むことに決めた
あなた

……はい?

あなた

(オリジナルソングの歌詞なんて、
初耳だよ!)

奏 音波
奏 音波
その子、聞いてないって
顔してるけど
轟 烈歌
轟 烈歌
今、伝えたからな
吹賀谷 響
吹賀谷 響
お前は……そんな大事なこと、
まずは本人に相談するべきだろう。
あなた、本当にすまない
あなた

いいえ、でも私……
塾があるので、お受けできません。
ごめんなさい

頭を下げれば、
音波先輩は私から興味をなくしたように、
キーボードに向き直る。
奏 音波
奏 音波
どんなに才能があっても、
やる気がないなら一緒にはできない
轟 烈歌
轟 烈歌
お前の楽曲とあなたの歌詞があれば、
これまで見たことねえ歌の世界が
見える気がすんだよ
奏 音波
奏 音波
でも、その子にとって大事なのは、
音楽よりも勉強。
結局、その程度の熱意しかない
ってことでしょ
あなた

(……その程度、なんかじゃない)

私にとって作詞は生きがいだ。
あなた

(だけど……言い返せない。
行動に起こせてもいないのに、
口先ばっかりになっちゃうから)

奏 音波
奏 音波
今回は諦めなよ、烈歌
悔しくて、情けなくて……。

私はぎゅっと鞄の取っ手を握り締め、
みんなに背を向ける。
あなた

中途半端に首を突っ込むのは、
私も申し訳ないですから……帰ります

振り返って軽く頭を下げると、
軽音部を飛び出す。
真宙 弾
真宙 弾
あっ、あなた先輩待って!
弾くんの呼び止める声が聞こえたが、
私は構わず走った。
あなた

(叶うなら、私だって
詞を書くことだけに
夢中になりたい……)

あなた

だけどっ

あなた

(私は医者にならなくちゃいけない。
無謀な夢を描いたところで、
あとで後悔するのは、私だ──)

だから、私は走る。

うっかり顔を出しかけた、
熱くてキラキラとした感情から、
逃げるように──。

***

──数日後。

放課後になり、
帰り支度をしていたときだった。

私の机にドンッと誰かが両手をつく。

轟 烈歌
轟 烈歌
よう、あなた。
軽音部に入れ
あなた

(まただ……)

ここのところ毎日、
烈歌くんが軽音部の勧誘に来る。
あなた

今日も塾があるから……。
あと目立つから、できればもう
教室には来ないでくだ──

轟 烈歌
轟 烈歌
仕方ねえか
あなた

(諦めてくれた!?)

ほっとしたのも束の間、
烈歌くんは私のカバンを奪った。
轟 烈歌
轟 烈歌
人質確保。返してほしけりゃ、
俺について来な
あなた

はい?

轟 烈歌
轟 烈歌
俺は絶対に欲しいと思ったやつは
死ぬ気で口説く主義なんだよ
あなた

(口説くって! 烈歌くんって、
なんでもかんでも直球すぎる……)

烈歌くんは私の手を握り、
引きずるようにしてどこかへと歩き出す。
轟 烈歌
轟 烈歌
逃がさねえ。これから俺が、
お前を身体の芯から火照らせてやる
あなた

意味が分からないよっ

轟 烈歌
轟 烈歌
音楽の熱、感じさせてやるって
言ってんだよ。覚悟しとけ
あなた

(ええ!?)