第9話

9話 烈歌VS弦
あなた

そうかな? 初めて言われたよ

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
なんかこう、
すっと胸に入ってくる
あなた

覚えられそう?

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
ああ、続けてくれ
そのあとも、私は和歌を
自分なりの解釈法で弦くんに伝える。

おかげで、最後のほうは弦くんも
すらすらと現代語訳ができるようになっていた。

***

──次の日。

私は隣のクラスに行くと、
弦くんを廊下に呼びだして、
テスト対策ノートを渡した。
あなた

これ、役に立つと
いいんだけど

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
ああ、助かる
言葉少なにそう言って、
弦くんがノートに手を伸ばす。
あなた

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
指先が触れ合った。
あなた

(弦くん、手、冷たいんだな)

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
あ、ありがとな
珍しく声を上ずらせて、
ノートを受け取る弦くん。
あなた

(もしかして、照れてる?
何事にも動じなさそうなのに……)

物珍しくてじっと見ていると、
ノートを開いた弦くんが目を見張った。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
これ……
弦くんが指さしたのは
ノートのあちこちに貼られた付せんだ。

あなた

あ、それはね、
引っかかりやすいところとか、
私も悩んだところとか、
補足しといたんだ

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
そうか
弦くんの口元が緩む。
あなた

(弦くんが笑ってる……!)

思わず目を奪われていると──。
轟 烈歌
轟 烈歌
あなた
教室の入り口から、
烈歌くんに呼ばれた。

轟 烈歌
轟 烈歌
弦だけじゃなくて、
俺にもかまえよな。妬くぞ
あなた

妬く──!?
また、そんなこと言って……。
からかってるんでしょう?

顔が熱くなる。

私は頬を膨らませながら、
烈歌くんのところへ行こうとした。

でも、後ろから腕を掴まれる。
あなた

え──

私を引き留めたのは、弦くんだった。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
…………
あなた

弦くん? 
まだ、聞きたいことあった?

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
あ、いや……
弦くんはなぜか、
戸惑うように視線を泳がせている。
あなた

(珍しいな。いつもなら
思ってることズバズバ言うのに、
歯切れが悪い。もしかして……)

あなた

大丈夫? 体調悪い?
勉強も根を詰めすぎないようにね。
これ、私の経験談

おどけるように肩をすくめれば、
弦くんは苦笑した。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
わかった。あと、俺も行く
あなた

あっ

弦くんは私の手を引いて、
烈歌くんの前に立つ。
あなた

(手、繋いだままなんだけど……
弦くん、気づいてないのかな?
烈歌くんの前で、恥ずかしい。
だけど、振り払うのも失礼だし……)

あれこれ考えていると、
烈歌くんは繋がれた私と弦くんの
手をちらりと見て、眉間にシワを寄せた。
轟 烈歌
轟 烈歌
俺の女神はやらねえぞ、弦
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
お前のモノみたいな言い方、
気に入らないな
交わるふたりの視線は
なぜかバチバチと火花を
散らしているようだった。
あなた

(なんで、こんなに険悪な空気に?
どうしちゃったの、ふたりとも……!)

***

あれから……。

歌詞を作りつつも
勉強を頑張ったおかげで、
無事にテストを乗り切ることができた
私と弦くん。

お父さんとお母さんの条件もクリアして、
私は晴れて正式に軽音部に入部することになった。

そして、やってきた夏休み──。
真宙 弾
真宙 弾
うおおおおっ、夏だーっ
奏 音波
奏 音波
弾、うるさいよ。
迷惑だから
真宙 弾
真宙 弾
ビーチに来て、
迷惑とかないっす!
騒ぐためにビーチはある!
奏 音波
奏 音波
ほんと、バカ
あなた

ははは……

私たちは今日、
海辺をステージにしたサマーライブへ
参加するために海に来ていた。

演奏動画を送った
アマチュアバンドの中から、
審査を通過した10組だけが出られるライブ。

『Passion Bomb』も
見事参加券を勝ち取った。
あなた

それにしても、暑いですね

真宙 弾
真宙 弾
それは、あれのせいだな
弾くんが指差した先には、
女の子に囲まれた烈歌くんと弦くんの姿が。

真宙 弾
真宙 弾
ザ・危険な男とクール男子。
女の子がほっておかないよなー
吹賀谷 響
吹賀谷 響
羽目を外さないのなら、
好きにさせておこう。それより
あなた、これを羽織るんだ
響先輩が自分の着ていたパーカーを脱いで、
差し出してくる。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
周りの男たちがあなたの
水着を無粋な目で見ている
あなた

え!?