第2話

2話 さすが、俺の女神
あなた

(──突然、なにを!?)

触れ合っている唇、腰に回った腕……。

心臓が今にも爆発しそうだった。

私は混乱しながらも、
ドンッと目の前にある胸を押しのける。
あなた

なにするんですか!

両手で唇を隠しながら後ずさると、
烈歌くんはにっと笑う。
轟 烈歌
轟 烈歌
軽音部に入部しろ
あなた

質問の答えになってない……

あなた

(というか、塾に遅れちゃうし、
早くノート取り返さないと!)

あなた

私、塾があるので、
失礼します!

すかさず烈歌くんの手からノートを奪い、
踵を返す。
轟 烈歌
轟 烈歌
逃がすかよ
あなた

ひゃっ

後ろから伸びてきた腕に引き寄せられ、
耳のすぐ近くで声がする。
轟 烈歌
轟 烈歌
お前の詞に惚れた
あなた

……あっ……

鼓膜をくすぐる低音ボイス。

甘い痺れがぞくぞくっと
全身を走る。
あなた

(ううっ、烈歌くんって、
なんでこんなにいい声なのっ)

轟 烈歌
轟 烈歌
ぜってえ逃がさないからな
あなた

(私……どうなっちゃうの!?)

***
あなた

(ああ、なぜ私は、
ここにいるんでしょう)

塾には体調不良で休むと伝え、
私は軽音部の部室に来ていた。
あなた

は、初めまして。
私は──

フルネームで名乗り、
私はペコッと頭を下げる。
轟 烈歌
轟 烈歌
お前らにも話してやるよ。
あなたと俺の運命的な出会いをな!
そう言って、
烈歌くんはなぜか得意げに
裏庭での出来事を話す。
???
???
 あなた先輩、よろしくな!
???
???
あなた、話は聞いた。
烈歌が面倒をかけたな
あなた

……!

あなた

(あなた……。
男の人に下の名前で呼ばれるのって、
なんか落ち着かないよっ)

だけど、烈歌くんが
当たり前のように私を名前で呼ぶので、
他の部員たちにも、それが浸透して
しまったみたいだ。
真宙 弾
真宙 弾
俺、真宙まひろ だん、1年!
吹賀谷 響
吹賀谷 響
吹賀谷ふきがや ひびき、3年だ。
それで、あそこにいるかなで 音波おとは
俺と同じ、あなたより1学年上になる
響先輩の視線を辿るように、
キーボードの前に座る男の子を見る。
奏 音波
奏 音波
烈歌がまた拾いモノしたの?
音波先輩は華奢で可愛いらしい
顔立ちだけれど、どこかツンとしていた。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
拾いモノなんて言い方はよせ。
あなたに失礼だろう
奏 音波
奏 音波
別に、その子だけに
言ってるわけじゃないよ。
僕たちだって、烈歌に拾われ……
誘われて、軽音部に入ったわけだし
真宙 弾
真宙 弾
ま、まあまあ先輩方!
まだ紹介してないのがひとりいる
んだし、その話はあとに……
???
???
それが烈歌を唸らせた歌詞か?
弾くんの言葉を遮るように響く声。

振り向けば、氷のような瞳を射抜くように
こちらに向ける男の子と目が合う。
あなた

(怖っ、怒ってる……のかな?
なんで? 私、なにか気に障る
ようなことした?)

私は返事ができず、びくびくしながら
クールな雰囲気の男の子を見つめ返す。
あなた

(この人も確か、烈歌くんと同じ
クラスだったよね。名前は、そう……
鳴瀬なるせ ゆずるくんだ)

鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
貸せ
手からノートを奪われる。

無表情にページをめくっていた弦くんは
長い沈黙のあとに顔を上げた。
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
全体的に抽象的すぎる。
具体的な描写と、もっと刺さる言葉を
要所要所に入れろ
あなた

は、はい……

あなた

(抽象的すぎる、か……
さすがに落ち込む)

ズバズバとダメ出しされ、
私はますます身を縮こまらせた。
あなた

(でも、確かにふわっとした歌詞が
多いかも。なんとなくわかる、みたいな
表現で済ませちゃってるというか……)

轟 烈歌
轟 烈歌
おー、さっそく弦の
お眼鏡にかなったな
あなた

へ? でも私、褒められて
ないですよね?

あなた

(むしろ戦力外通告を
受けたような……)

轟 烈歌
轟 烈歌
弦は伸びしろがないと思ったら、
アドバイスなんてしないからな
あなた

(そう……だったんだ。
じゃあ、少しは認めて
もらえたってこと?)

落ち込んでいた気持ちが
浮上してくる。
あなた

(よかったあ)

思わず顔をほころばせたとき──。

──チュッ。

いきなり烈歌くんが頬にキスをしてきた。

轟 烈歌
轟 烈歌
さすが、俺の女神
あなた

なっ、なっ、なな……!

あなた

(また、性懲りもなくキスを……!
もう嫌っ、なんなのこの人!)

顔に熱が集まり、
私はとっさに一番頼りがいがありそうな
響先輩の背に隠れる。
あなた

た、助けてくださいっ