第11話

11話 意味深な発言
3,490
2020/06/10 09:00
『Passion Bomb』のオリジナルソングが
烈歌くんのコールで始まる。

鮮やかに掻き鳴らされるギターと
激しいドラムのリズム。
轟 烈歌
轟 烈歌
──俺の奥まで染み込むポーション、
熱くたぎらせて
あなた

すごい……

あなた

(ここにいる人たちは、
『Passion Bomb』のことを
初めて見るはずなのに、
会場は最高に盛り上がってる!)

轟 烈歌
轟 烈歌
──誘惑に負けるのは悪くない
初めて書いた挑発的な歌詞。

ライブを見てる女の子たちが
歓声をあげている。
あなた

(夏だから、みんなをドキドキさせる
刺激的な歌詞を書きたかったんだよね。
それがちゃんと伝わってるんだ)

轟 烈歌
轟 烈歌
──今夜、どこまで堕ちようか
あなた

(みんなに見せるのは
恥ずかしかったけど、
書いてよかった)

達成感が自分の中に
湧き上がるのを感じながら、
私はみんなの姿を目に焼きつけた。

***

ライブが終わり、
私たちは砂浜に並んで海を眺めていた。
轟 烈歌
轟 烈歌
せっかく海に来たのに
見てるだけとか、もったいねえな。
最後に中に入るぞ
烈歌くんが私のパーカーの
ファスナーをつまむ。
あなた

なっ──

そのままジーッと下ろされ、
白の水着が露になった。
轟 烈歌
轟 烈歌
白か、あなたは誰色に染まりたい?
こんだけ男がいるんだからな。
選びたい放題だぞ
あなた

し、質問の意味がわからないよ

あなた

(というか、そんなジロジロ見ないでっ)

水着を着るのは、
中学のプールの授業以来だった。

当然、私用の水着なんて持っておらず、
買いに行ったのだけれど……。
あなた

(ビキニって、
改めて見ると露出度が高い!)

なにを買えばいいのかわからなくて、
店員さんに勧められたものを
そのまま買ってしまった。

今さらながら、後悔していると──。
吹賀谷 響
吹賀谷 響
お前はなにをしてるんだ!
ゴツンッと、響先輩の拳骨が
烈歌くんの脳天に落ちる。
轟 烈歌
轟 烈歌
いってえ
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
自業自得
真宙 弾
真宙 弾
ま、まあまあ。
思わず手が出ちゃうくらい、
あなた先輩が可愛いって
ことっすよね!
鳴瀬 弦
鳴瀬 弦
これだから、
本能で生きてるやつは
轟 烈歌
轟 烈歌
理性にばっか囚われてると、
欲しいもんを逃すかも
しれねえだろ?
烈歌くんはそう言って、
私の手を引く。
轟 烈歌
轟 烈歌
抜け駆けさせてもらうからな。
あなた、行くぞ
あなた

あ、わわっ!

あなた

(いつも強引なんだから!)

そうは思いながらも、 
振り回されるのは悪くないと
思っている自分もいて……。

私はついて行ってしまう。
あなた

(だって、烈歌くんは私を
いつも知らない世界に
連れて行ってくれるから)

轟 烈歌
轟 烈歌
あなた、思いっきり
ジャンプしろ!
あなた

うん!

私たちは砂浜から海に向かって、
大きくジャンプする。
あなた

(今ならわかる。みんな烈歌くんの
そういうところに惹かれてるんだ──)

──バッシャーン!

大きな水しぶきが舞い、
私たちはびしょ濡れになった。
轟 烈歌
轟 烈歌
水も滴るなんとやらだな
歯を見せて笑う烈歌くんに、
私もふふっと笑う。
あなた

いい男、だね

轟 烈歌
轟 烈歌
それを言うなら、
あなたはいい女、だけどな
あなた

また、冗談ばっかり

あなた

(烈歌くん、そういうこと
ばっかり言うから、本気なのか
冗談なのか、わからないんだよね)

轟 烈歌
轟 烈歌
本気だぞ、俺はいつでも
思いの外、真剣な目が向けられる。
あなた

(え……)

一瞬、息ができなくなった。

心臓がうるさいくらい騒ぎ出す。
轟 烈歌
轟 烈歌
いつも、どこにいても、
あなただけが輝いて見える
烈歌くんの濡れた手が伸びてきて、
頬に張り付いていた髪を
耳にかけてくれた。
あなた

烈歌……くん?

あなた

(どうしよう、ドキドキする)

烈歌くんから目を離せないでいると──。

真宙 弾
真宙 弾
俺たちも混ぜてくださいよー!
声のほうへ顔を向ければ、
弾くんが砂浜から走ってくるのが見えた。
轟 烈歌
轟 烈歌
邪魔が入ったな。
けど、夏休みは長い。
時間をかけてたっぷりと伝えてやる
あなた

(なにを!?)


意味深な発言と、頬に触れたままの指先。

幕を開けたばかりの夏休みは、
刺激的なものになる予感がした──。

プリ小説オーディオドラマ