第18話

18話 心動かす歌
あなた

私、今の高校にいたい。
部活だって続けたいの

お父さん
お父さん
部活がなんの役に立つ。
これは決定事項だ、
もう学校には連絡したからな
あなた

そんなっ

あなた

(嘘でしょう……?)

***

先生
先生
突然だが、残念なお知らせがある
朝のホームルームで私の転校のことが
先生の口から説明された。
あなた

(夢ならよかったのに……。
転校が事実なんて、
信じたくなかった)

完全に打ちひしがれ、
授業に集中できないまま、
放課後になり……。

私は顧問の先生に退部届を提出し、
メンバーにはなにも言わずに帰ろうとしていた。
???
???
おい!
下駄箱で靴に履き替えていたとき、
すぐそばでドンッと音がする。

顔を上げると、下駄箱に手をついて、
怒った顔でこちらを見ている烈歌くんがいた。
あなた

(きっと、私が部活辞めるの
知ったんだろうな)

退部届はさっき提出してきたばかりだ。

なのに、話が回るのが早い。
轟 烈歌
轟 烈歌
なんで、なにも言わずに
いなくなろうとしてんだよ
あなた

会うと、別れが辛くなるから……

轟 烈歌
轟 烈歌
なんだよ、別れって
あなた

……、……転校するの、私

息を詰まらせたあと、
なんとかそう口にする。
轟 烈歌
轟 烈歌
は? なんで急に……
あなた

私を医者にするために、
お父さんとお母さんが医大に
ストレートに行ける高校に入れって

轟 烈歌
轟 烈歌
お前はそれでいいのか?
自分の将来を勝手に決められて
あなた

よくない。本当は作詞家になりたい。
みんなと一緒にいたら、
その気持ちがどんどん強くなった。
だけど──

轟 烈歌
轟 烈歌
なら──!
あなた

できないの!
私は、医者の娘だから。
そうなることを、
ふたりが望んでるから!

私は叫んで、その場から逃げ出す。

込み上げてくる涙を拭いもせずに、
私は家まで走った。

***

あれから烈歌くんたちが代わる代わる
クラスまで会いに来たけど、
鉢合わせないように逃げる日々が続いた。

そしてやってきた、文化祭の日──。
お母さん
お母さん
では先生、お世話になりました
お母さんと一緒に先生に挨拶をして、
職員室を出る。
あなた

(学校を去る日が文化祭当日だなんて、
悲しい偶然だな)

お母さん
お母さん
あ、病院から電話だわ
お母さんが静かな場所を探して、
歩き出す。

そのあとをついていく途中、
聞き覚えのある音楽が聞こえて、
私は足を止めた。
クラスメイト1
クラスメイト1
体育館で、軽音部が
ライブしてるらしいよ
クラスメイト2
クラスメイト2
じゃあ行ってみる?
あなた

(烈歌くんたちの演奏……。
見に行きたい)

胸の前で、ぎゅっと拳を握り締める。
あなた

(だけど、お母さんが……)

遠ざかっていくお母さんの背中と、
音が聞こえてくる後ろを交互に見る。
あなた

(行ったら、
きっと引き返せなくなる)

それくらい、私の医者の道に進むという
決心は脆かった。
あなた

(だけど──私はみんなの音を、
あの人の歌を、感じたい!)

私は衝動的に駆け出した。

だんだんと、烈歌くんの歌が近くなる。

階段を駆け下りて、
体育館に飛び込むと──。
轟 烈歌
轟 烈歌
──6つの色が奏でる音、
重なる心を抱きしめたら
あなた

(この歌、私が書いた……でも、
〝5つ〟が〝6つ〟になってる)

最初に作詞したものは、
【5つの色が奏でる音、
重なる心を抱きしめたら】だった。

これは私を除くバンドメンバー
みんなのことを表した。

私は裏方だから、みんなの音には
含まれないと思っていたのだ。
轟 烈歌
轟 烈歌
──生まれるハーモニーで
みんなを沸かせようか
あなた

(あんなふうに逃げたのに、
みんなは私を仲間だと思ってくれてる。
私も含めて6つの音だって、
言ってくれてるんだ)

烈歌くんの歌を聞いていたら、
私の頬に涙が伝う。

そのとき、烈歌くんと目が合った気がした。