思わず素直に感嘆してそう言い、ふとつかさの顔を見ると、顔が真っ赤になっていた。つかさとは反対に、疾斗の顔からは血の気が引いていく。
咄嗟に疾斗が謝ると、つかさは慌てて首と手を横に振った。
傷つけたわけではないらしい。ホッとして、つい疾斗もうなずいた。
ほんわかした高嶺の花から『カンスト』なんて言葉が出てくるのが意外で、ちょっと面白い。笑いを堪え、疾斗もスマホを出してアプリを起動する。
疾斗がそう言うと、つかさは少し小首を傾げて恐る恐る口を開いた。
これは他にもゲームをやりこまないと出てこないセリフのような気がする。
思わずつかさを見ていると、つかさが大きな目で見つめ返してきた。
つかさが何か言う前に、内心で謝り倒して心の準備をしておく。
予想外の言葉に、脳の処理が遅れた。今、何て?
決して、嫌ではないのだが──
その疑問で疾斗の頭はいっぱいになる。自分の今の状況がよくわからなくなってきた。
しかし顔には出さないよう、疾斗はつかさに『Lv99』のIDを教える。
教室とは違う彼女の笑顔を見ていると、どうしても断れなかった。
IDを教え合い、相手をフォロー。これでマルチプレイができるようになる。
何気なく訊いただけだったのが、つかさはひどく恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせた。
疾斗の言葉に、つかさは目を輝かせた。その勢いに少し驚く。
というか、理由としてはメジャー。疾斗はただ何も思いつかなくて『ハヤト』にしただけ。今さら捻りがなくて面白くないなと思ってしまう。
つかさはうつむきがちだった顔を上げて、ホッとしたように笑った。
周りにはゲームをする友人も、音楽の趣味が似た友人もいないのだろうか。
自分の好きなことを一緒に楽しむまでとはいかなくとも、それを認めてくれる人さえいないなら、毎日窮屈ではないのだろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。