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2018/09/19

第13話

第一章 信じたくて信じられなくて-10
嬉野疾斗
嬉野疾斗
じゃあ、俺も疾斗でいいよ
嬉野疾斗
嬉野疾斗
(!? は!? 何言ってんの俺!?)
自分の言葉を自分の耳で聞いて、心臓が止まった気がした。そんなことを言うつもりはなかったのに。パニックって怖い。つかさの顔を見られない。
聞こえてきたのは、あまり聞いたことのない明るい声だった。
日廻つかさ
日廻つかさ
うん、疾斗くん!
疾斗は熱くなった顔を見られないよう顔を逸らしながら、彼女の笑顔を抑えるように手を挙げた。
嬉野疾斗
嬉野疾斗
あの、やっぱ……ゲームしてる時限定で、お願いします……
なぜか敬語になる。つかさを横目で見ると、ちょっと首を傾げていた。
日廻つかさ
日廻つかさ
? うん、わかった
本当にわかっているのかわからないが、つかさは頷いた。女子は名前で呼ぶことに抵抗がないのだろうか。それとも彼女が天然なのか。
日廻つかさ
日廻つかさ
ふふっ
嬉野疾斗
嬉野疾斗
な、何?
日廻つかさ
日廻つかさ
ううん。何かね、疾斗くんって呼ぶ方が、落ち着く気がして
嬉野疾斗
嬉野疾斗
(……俺は心臓が保ちそうにないんですけど……っ!)
この動揺が顔に出てないことを祈る。
幸い動揺は悟られていなかったのか、つかさはスマホの時計を見て声を上げた。
日廻つかさ
日廻つかさ
あ! 私、そろそろ帰らなきゃ。疾斗くんはどうする?
さっそく名前で呼ばれて、落ち着いていた心臓がびくっと跳ねた気がした。
日廻つかさ
日廻つかさ
一緒に帰る? 駅の方?
嬉野疾斗
嬉野疾斗
いや……俺と一緒にいたら、昼間みたいにあんたもイジられるから。そういうのはやめといた方がいいと思う
つかさから反応がない。彼女を見ると、疾斗に身体を向けながら深くうつむいていた。
日廻つかさ
日廻つかさ
あの時……止められなくて、ごめんなさい
嬉野疾斗
嬉野疾斗
……え?
どうしてつかさが謝るのかが心底わからなくて、疾斗はぽかんと口を開ける。うつむいているのではなく、頭を下げているのだとようやくわかった。
日廻つかさ
日廻つかさ
……疾斗くんが嫌がってるってわかってたのに、私、あの時何も言えなくて……
誰かが何か言って止められるなんて、思ったこともなかった。
嬉野疾斗
嬉野疾斗
そんなこと気にしたこともなかった。俺は……その、あんたが巻き込まれてイジられるのが、嫌だったんだ
自分がイジられるだけなら、無視もできる。でも、誰かが巻き込まれるのは嫌だった。──それがつかさなら、なおさら。
嬉野疾斗
嬉野疾斗
(……あれ? 俺もしかして今、すげえ恥ずかしいこと言った……!?)
今さら気付いて、疾斗は熱くなる顔を隠すように鞄を整理するふりをした。伸びすぎた前髪と夕日が、赤くなった顔を隠してくれているといいけれど。
つかさは疾斗を見つめると、申し訳なさそうな表情から、ゆっくりと微笑んだ。
日廻つかさ
日廻つかさ
……やっぱり疾斗くんは、強くて、優しい人だね
微笑みながらそんなことを言われて、照れるなと言う方が無理だ。全然強くも優しくもないのに。
嬉野疾斗
嬉野疾斗
ンなこと、全然ないから! ……早く帰った方がいい
さすがに照れているのに気付かれたのか、つかさが小さく笑った。
日廻つかさ
日廻つかさ
うん、わかった。じゃあ、また明日ね。よかったら、また明日ここでゲームしよ
つかさは疾斗に笑顔で手を振って、うまくドアを開けて屋上から出ていった。
嬉野疾斗
嬉野疾斗
(……たまたま、だ)
屋上のタイルをぼーっと見つめながら、自分に言い聞かせる。
日廻つかさ
日廻つかさ
 ──また、一緒にやらない?
 ──じゃあ、また明日ね。
「また」という、その言葉は本当だろうか。
嬉野疾斗
嬉野疾斗
(でも……この一回きりでも、俺にしたら幸運すぎるよな)
憧れていた子とこんなに話が合って、一緒にゲームができるだなんて、もうそれだけで運を使い果たした感じ。