テーブルに貼られた紙に、あなたがボールペンを走らせていく。
嘘つき↓と自分を矢印した。
懐かしいこの字。
中学生の頃の黒板に書かれた字を思い出してた。
『鬼ごっこしてるの』
『たいくつだから』
『彼だけを見つめて暮らしてるとおかしくなる』
『今はね、太輔が鬼』
『なんで長崎?』
『遠いじゃん』
『なのに、なんで電気屋?』
「金指が、あなたがいるって教えてくれた」
『だから、来たの?』
「そーするしか、会えないよね?」
『ここに来てくれたら、会えるよ』
「電話は出来ないのか」
『もう、ダメなのかもね』
「なに?」
『あたし、高橋くんに会えたのに、身体が熱くならなかった』
思わず、あなたの頬に手を伸ばしてしまった。
あなたはゆっくりそれを外した。
『キスしてみる?』
『思い出せるかな』
『あんな風に、ヒトを想うことないってくらい、好きだったのに』
『だんだん、忘れてしまうのね』
『高橋くんは、若い分、まだ』
『あと10歳くらい経つと楽になれるよ』
ぽたん、、、
そうあなたが書いた紙に、あなたの涙が落ちた。
あなたはテーブルのこっちに来て、
むぎゅーーーーっとしてくれた。
あなたの髪から、オレの愛したオンナの匂いがした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!