第317話

平野市の花火③
2,040
2020/05/21 00:00
あなた

りんご飴買って帰ろ?

高橋くん
高橋くん
りんご飴?
あなた

うん、赤いやつ。

高橋くん
高橋くん
いいよ
終わりに向かってる、オレたちのデート。
そうです、、くたくたの高橋です。







どうしても、花火を見ながら、これが最後なのかなって思いから逃れれず、、、



ほんとに嫌だ。




砂浜の砂が波にさらわれるように、、、




足の裏の砂が、ざざーーーーっって、引かれていく感覚。





何もできないまま、手放してしまうような、、、




怖いんだよ、、、








あなた

この道、通ってたのよ。中学も、高校も。

高橋くん
高橋くん
そうなの?バス?
あなた

まさか、歩き

高橋くん
高橋くん
山の上までだよね?
あなた

うん、1時間くらい。

高橋くん
高橋くん
なのに、お前歩くの下手だな
あなた

うふ、毎日こけてた。

高橋くん
高橋くん
自転車は?
あなた

止まれないから、危ないよね

高橋くん
高橋くん
やめてーー!こえーわ
高橋くん
高橋くん
よく、生きてたね
あなた

会いたい人が居たんだよ

高橋くん
高橋くん
そうなの?
あなた

うん、、、

高橋くん
高橋くん
ごめん、、、
あなた

なんで泣くの?

高橋くん
高橋くん
ごめん、、、もう、いいから。
あなた

あたしを必要にしてくれる人に会いたかった

高橋くん
高橋くん
・・・う、、うん。
あなた

学校も、部活も。高橋くん、、

あなた

いつも、あたしを待っててくれる

あなた

生きててよかったなって、思うでしょ?

高橋くん
高橋くん
・・・うん。この先も、死ぬまで、必要だから。オレ生きていくのに、あなたが必要。
あなた

ふふ、、、うん

高橋くん
高橋くん
こんなにりんご飴買ってどーするの?
あなた

ひと月に1個ずつ食べていくの

高橋くん
高橋くん
は?
あなた

花火、嫌い?

高橋くん
高橋くん
好きだよ?
あなた

でしょ?

高橋くん
高橋くん
わかんない、何言ってんの?
あなた

ふふふーーー

あなた

浴衣、着ようと思ってたんだ

あなた

家に広げてあるから、、、帰りたくないな

高橋くん
高橋くん
藤ヶ谷、家にいる?
あなた

わかんない、、

高橋くん
高橋くん
オレ、、、ごめん、、、あなたのこと、困らせてばっかり
あなた

困ってないよ

高橋くん
高橋くん
そおかな?
あなた

そんな風に言わないで。あたしの大切な人だから。






オレたちは、手を繋いで、延々と山道を歩いて行った、




いくら話しても、


いくら身体を重ねても、


この不安を解消できる事はない。






今、こうして一緒にいられる瞬間を大切にするしかない






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