僕は普通だった。
勉強も運動も人間関係も。
良くもないし悪くもない。
そんな代わり映えのない日々に飽き飽きしていたんだ。
小学6年の時、通学路で彼を見つけた。
彼は全身ずぶ濡れで、近くにバケツが落ちていたことから、
また、いじめられているんだと分かった。
僕と彼は幼稚園からの幼馴染だった。
でも、毎日のようにいじめられている彼に手を差し伸べる勇気がなかった。
なんでだろ。あの時、彼の方に足を進めたのは。
なんでだろ。あの時、彼がとてつもなく重いものを背負っているように思えたのは。
若干声が震えて、甘噛みしてしまった。
心臓の音がうるさい。
拒絶されたらどうしよう。
振り払われたらどうしよう。
どうし…
僕の不安を吹き飛ばしてしまうような、
まるで太陽のような笑顔だった。
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ピンポーン
ガチャリ(モブがドアの鍵を閉める)
僕は身の危険を感じ、すぐスマイリーくんにSOSの電話をかけた。
【は〜い、もしもし?】
男の人が足をかけてきて、僕は激しく転倒、男の人が通話を切ってしまった。
手を前に出せず、胸を強く床に打ちつけた。
上手く呼吸ができない。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
逃げなきゃ。
どうしよう。
俺は必死に玄関に向かい走った。
僕は男の人に思いっきり背中を押された。
自分が走っていたこともあり、遠くまで飛ばされる。
体中が悲鳴をあげている。
僕はせめてもの抵抗として右手を彼の方に向けた。
男の人は僕に振り下ろした拳を力なく下ろた。
そう言って男の人は倒れてしまった。
怖かった。
怖かった。
でも、僕がこの人を倒した?
熱い。
苦しい。
怖い。
自分の事しか考えられない自分が…怖い。
びびくんなら…
今、こーくさんとかの心配してたりするのかな。
スマイリーくんなら…
今の状況を整理して最善策を考えるだろうな。
普通じゃない生活を送りたいのに、
いざとなると何にもできない。
だからびびくんのいじめだって止められなかったし、
スマイリーくんにいっつも気を遣わせちゃってる。
そんな僕が…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!