第7話

7話。
877
2021/03/27 10:58
こーく
こーく
はぁ〜あ、やっと退院できた〜
俺がびびくんのストーカーにお腹をぶっ刺されて1週間。

びびくんは3日前に退院したが、体力はまだ戻ってないらしく、なろくんに面倒を見てもらっているらしい。


俺はというと…経過観察ということでスマイリーが家に来てくれることになっているのだが…





電話にて------------------------------------------
スマイリー
スマイリー
こーくごめん〜道迷ったぁ〜
こーく
こーく
はぁ?
俺ん家くるって言ったの誰だよ‼︎
スマイリー
スマイリー
俺が方向音痴なの知ってるだろ〜?
お前のうちの周りの地図送ってくれよぉ〜
こーく
こーく
はぁ、わーったよ。
送ってやるよ。俺ん家の近く少し歩きまわっとくからそれでわかりやすくなるはずだから。
スマイリー
スマイリー
ありがとなぁ〜





テクテク…
こーく
こーく
方向音痴なのは昔から変わってないんだな…
俺は一人でそう、呟いた。
雲が少しかかっていた太陽がはっきりと顔を見せた。

少し吹く風が心地良い。
こーく
こーく
久しぶりにいい気分だなぁ
子ども
子ども
うおーっ‼︎
高い高いっ!
こーく
こーく
声のした方に顔を向ける。


そこには、お父さんに肩車してもらい、お母さんに微笑みながら見守ってもらっている男の子の姿があった。
そして、その少し後ろに女の子が悲しそうな顔で3人の後をついて来ていた。
子ども
子ども
お姉ちゃん!
いいだろ〜
子ども
子ども
ッうん。いいなぁ〜
女の子はニコニコしながら言った。







その女の子が昔の俺みたいで…
こーく
こーく
ッ…
妹
いたいいたいっ!
お母さん
お母さん
こんな馬鹿な母親でごめんね…
そらびび
そらびび
あなたには俺の気持ちなんてわからないだろ!
こーく
こーく
はぁッ…はぁッ………
そらびび
そらびび
こーく。
こーく
こーく
びびくんっ!?
そらびび
そらびび
お前は天使の血筋の落ちこぼれなんだよ。
そらびび
そらびび
お前が外に出たから妹を苦しめた。
そらびび
そらびび
お前が晴男だからお母さん達は悲しんだ。怖がった。
そらびび
そらびび
そんなお前が、嫌いだ。
こーく
こーく
ッ…
こーく
こーく
俺のッ…せ、い?
こーく
こーく
ど…しよ…
こーく
こーく
俺はッ俺が…ッ嫌いだ………
     …く!
       こーく
        こーくっ‼︎
こーく
こーく
ぁ…
スマイリー
スマイリー
よ、よかった…
そこには顔が赤くなったスマイリーが座り込んでいた。
スマイリー
スマイリー
お前…また取り乱してた…
辺りはさっきの快晴が嘘のようにひんやりとしていて、さっきの親子もいつのまにかいなくなっていた。
こーく
こーく
また力、コントロール出来なかった…ごめん………



_________________________________________________________________________________
僕が道に迷い、こーくの送ってくれた地図通り歩いてしばらく、少し気温が上がっているのに気づいた。
スマイリー
スマイリー
よかったぁ
こーくここら辺にいるんだ!
元々晴れてはいたが、こーくの晴の力でより一層厳しくなった暑さに思わず顔をしかめた。
スマイリー
スマイリー
…あれ?なんかもっと熱くなってないか?
僕が足を進めるにつれて上昇していく気温。
流石におかしいと思い、熱中症になりかけている足を無理矢理動かした。
スマイリー
スマイリー
やっぱりな…
家の前でこーくはうずくまって何かを呟いている。
スマイリー
スマイリー
おい‼︎しっかりしろ‼︎
反応がない。
スマイリー
スマイリー
過去の自分にとらわれちゃ駄目だ!
反応がない。
こーく
こーく
俺はッ俺が…ッ嫌いだ………
まずい。
周辺の気温がどんどん上がっている。
こうなったら…



僕は右手を空に向かってあげた。


僕は晴男でも雨男でもない。
両方の力を持つ能力者だ。おまけにコントロールもできる。
そんな奴がいるなんて世間に知られると、政府が僕に対して何をしてくるかわからない。
だから、いざという時にしか僕は力を使わない。
使えないんだ。



ポツ…ポツポツ………

周りの気温を下げるために。

でも太陽の光を遮らない程度に。

あまり冷え込みすぎないように。

濡れすぎないように。


気温が下がったことでこーくもゆっくりと目を開けた。


安心した気持ちと疲れで僕はその場に座り込んだ。
スマイリー
スマイリー
よ、よかった…




_________________________________________________________________________________


スマイリーが助けてくれたのか。

でも自分で無能力者だって言っていた覚えが…

もういいや。

よくわからない。

さっきのは幻だったのか。

  …どこから?

     どこまで?

今、俺が見てるのも幻なの?

びびくんとあったのも幻?

まず、俺は存在してるの?

…よくわからない。


ポツポツポツポツポツ…

雨が急に降って来た。

スマイリーが驚いてることから彼ではないんだろう。
こーく
こーく
あぁ知ってる。

こんな雨を降らせる人を。

悲しくて、

苦しくて、


それでも綺麗で。

神様だってこんな雨は降らせることなんてできない。





まだ手足を動かしにくいのか、気ごちなく走ってくる。

青のような、水色のような色のカーディガンをなびかせて、

雲の形のピンを頭にくっつけて。
そらびび
そらびび
こーくっ‼︎

プリ小説オーディオドラマ