俺がびびくんのストーカーにお腹をぶっ刺されて1週間。
びびくんは3日前に退院したが、体力はまだ戻ってないらしく、なろくんに面倒を見てもらっているらしい。
俺はというと…経過観察ということでスマイリーが家に来てくれることになっているのだが…
電話にて------------------------------------------
テクテク…
俺は一人でそう、呟いた。
雲が少しかかっていた太陽がはっきりと顔を見せた。
少し吹く風が心地良い。
声のした方に顔を向ける。
そこには、お父さんに肩車してもらい、お母さんに微笑みながら見守ってもらっている男の子の姿があった。
そして、その少し後ろに女の子が悲しそうな顔で3人の後をついて来ていた。
女の子はニコニコしながら言った。
その女の子が昔の俺みたいで…
…く!
こーく
こーくっ‼︎
そこには顔が赤くなったスマイリーが座り込んでいた。
辺りはさっきの快晴が嘘のようにひんやりとしていて、さっきの親子もいつのまにかいなくなっていた。
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僕が道に迷い、こーくの送ってくれた地図通り歩いてしばらく、少し気温が上がっているのに気づいた。
元々晴れてはいたが、こーくの晴の力でより一層厳しくなった暑さに思わず顔をしかめた。
僕が足を進めるにつれて上昇していく気温。
流石におかしいと思い、熱中症になりかけている足を無理矢理動かした。
家の前でこーくはうずくまって何かを呟いている。
反応がない。
反応がない。
まずい。
周辺の気温がどんどん上がっている。
こうなったら…
僕は右手を空に向かってあげた。
僕は晴男でも雨男でもない。
両方の力を持つ能力者だ。おまけにコントロールもできる。
そんな奴がいるなんて世間に知られると、政府が僕に対して何をしてくるかわからない。
だから、いざという時にしか僕は力を使わない。
使えないんだ。
ポツ…ポツポツ………
周りの気温を下げるために。
でも太陽の光を遮らない程度に。
あまり冷え込みすぎないように。
濡れすぎないように。
気温が下がったことでこーくもゆっくりと目を開けた。
安心した気持ちと疲れで僕はその場に座り込んだ。
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スマイリーが助けてくれたのか。
でも自分で無能力者だって言っていた覚えが…
もういいや。
よくわからない。
さっきのは幻だったのか。
…どこから?
どこまで?
今、俺が見てるのも幻なの?
びびくんとあったのも幻?
まず、俺は存在してるの?
…よくわからない。
ポツポツポツポツポツ…
雨が急に降って来た。
スマイリーが驚いてることから彼ではないんだろう。
こんな雨を降らせる人を。
悲しくて、
苦しくて、
それでも綺麗で。
神様だってこんな雨は降らせることなんてできない。
まだ手足を動かしにくいのか、気ごちなく走ってくる。
青のような、水色のような色のカーディガンをなびかせて、
雲の形のピンを頭にくっつけて。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!