有岡くんと別れ、先輩と駅に向かう。
恐れ多いよ。
でも、初日にしてそんなこと言ってくれるのは嬉しいなぁ、なんて思ったり。
でもそれは、おそらく昔からの付き合いだからじゃ…?
ほら…、笑
え!?
い、いきなりクレープ!?
待って待って…。
混乱なう…笑
しかも、じゃあって何?
それなら、的な意味でしょ?
どこがどうなったら、敬語抜く→クレープ食べる、になるの!?
言いながらはっとした。
し、しまった…。方言が……!!
これだけはバレたくなかった…。
山口って誰も知らないだろうし…、
それに田舎者…って…、
最悪だ…っ!!
予想外の反応に目を丸くする。
舞香先輩は、目をキラキラさせていた。
え、えぇ!?
せ、先輩…いったい、どこまで優しいの?
一瞬、首を傾げそうになったけど、先輩はどうやら察してくれたらしい。
山口出身を知られたくないことを。
やっぱり、本当に尊敬する。
その優しさを私なりに無駄にしないよう、ありがとうございますと言って、おすすめのクレープ屋を教えた。
☆☆
私達が頼んだのは、このお店の人気クレープだ。
ほろ苦いガトーショコラとチョコソースで、チョコ好きにはたまらない。
アーモンドがアクセントになり、さらに香ばしくなる。
…ん?それ、軽くディスってる??
何も出来ない人、的な感じに…。
いや、それはないよね。
うん。
そう言って、先輩は私の鼻目掛けて腕を伸ばした。
うぅ…お恥ずかしい…。
小さく唸り、先輩を上目遣いに見上げる。
なんだか可笑しくて、くすくす笑いながら先輩の唇横に付いたクリームを拭った。
マンション名もついでに言った。
すると、先輩はマジ?とでも言うような表情になった。
あ…。
ま、まーたやっちゃったよぉ〜。
すいません、と俯く。
今度こそ本当に嫌われた。
いや、そもそも気を使って一緒に帰ってくれてるだけか。
もともと好かれても……ははっ…。
今すぐ叫びながら走りたい気持ちを抑えて、クレープを1口食べた。
ほら、また先輩に気を使ってそんな事言わせた…。
そのまま、先輩は言葉を続けた。
苦笑いを浮かべた。
私だって、こんなに先輩と仲良くできるなんて思ってなかったし…
はっきり、こういう関係になるのって、私の理想でもあって…。
女同士の恋愛、じゃなくて、
先輩後輩関係なく、親友としてじゃれ合うの。
先輩はじっと見つめた。
そして、何かが吹っ切れたように突然笑いだした。
せっかく頑張ったのに〜…。
はい、反省の色全く無しだー。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。