周りには人、人、人、人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人、ひとぉぉぉ!!!!
だらけだ。
そりゃ、ここは東京駅構内で、今は通勤通学する時間だから当たり前だけど、
山口県という田舎から来た私からしたら…ねえ?言葉も出ないくらい大変というか、疲れるというか。
あまりの人の多さに、頭が混乱しているよ。
ピシッと着こなしたはずの制服も着崩れして、頑張ってセットした髪もぼさぼさの始末だ。
そもそも、私がわざわざ遠い東京の高校を受験した理由は、
それはズバリ…
制服が山口と比べてオシャレだからー!!!!!!!
そりゃあ、私立に行けば、山口にだって制服がオシャレなとこはあるよ?
でも、私立はお金がかかって、金銭的にも行けない。
それに、高校では何もかもを1度リセットするって決めてるし。
友達もそうだし、自分も。
親に甘えっぱなしで、ぐーたらしてた自分とはおさらばだ。
でも、いざ来てみると東京の人は山口と違って……冷たい。
ぶつかっても何も言わないし、妊婦さんや怪我している人、明らかに具合が悪そうな人にも席を譲ってあげもしない。
…ってか、おじいちゃんおばあちゃんは見当たらないな…。
山口ではおじいちゃんおばあちゃんが呑気にお散歩してるんだけどなぁ。
故郷と東京を思い比べていると、頭上から声が降りかかった。
それはそこに立ち止まらないでという注意だった。
ほぼ人に押されるように駅のホームへ出て、電車を待った。
今更だけど、大丈夫だよね?
田舎感、出てないよね?
スリーブ状態のスマホの画面を鏡代わりにして前髪を整える。
何度もお兄ちゃんや親に自分の写真送って聞いたから大丈夫だろうけど、
周りの可愛い女の子達を見ると一気に不安が胸を突き上げる。
間もなく、電車が目の前で止まり、出てくる人と入ろうとする人に押し流される。
何とか人を避けながら車内へ。
ふぅ。やっぱり慣れない…。
小さく息を漏らし、ドアに体重を預ける。
初日からこんなんじゃ、やってけるわけない。
……いや、違うぞ、あなた。
やれるわけないなんて、そんなわけない。
自分で選んだ道なんだから、胸を張って歩かなきゃ。
そう意気込んだ時、LINEの通知が来た。
兄からだ。
《大丈夫かー》
それはまるで、
さほど心配していないけど母に言われたから仕方なく聞いてあげた、と言うけど本当は誰よりも心配している男子、という感じだった。
短く大丈夫だ、と返して電源を落とし、
窓の向こうを眺めた。
トンネルに入っていて真っ暗だけど。
兄は私と5つ離れている。
兄は小学校の頃に色々あって、中学は福岡の博多にある中高一貫校を受験して、
学校側が用意してくれたアパートで暮らしていた。
特に門限などはないが、学費に電気代や食費が加算されて、ちょっとお金がかかるけど。
そして今も、福岡の私大に。
そう、頭が良いのだ。
地味に。
軽いマスク依存症で、コーラしか飲めない人だけど、地味に、意外にも、頭が良いのだ。
ふと、「何回も言わんで良か!」と突っ込む兄の姿が思い浮かんだ。
そして頬が緩む。
まだ目的の駅に着かないから、片耳だけイヤホンを付け、もう一度電源を入れた。
☆☆
学校に着いて、下駄箱へ行くと先輩達が色々と誘導していた。
入学式の時は、教室には行かなくて、体育館集合解散だったから、初めて教室へ行く。
でも、クラス表が……見えない(苦笑)
つま先立ちしても前の人の頭で見えない。
人が引くのを待とうと隅に寄った。
すると、入学式の時に紹介された総務委員長の…確か峰岡先輩が声をかけてきた。
どうして名前を知ってるいのだろう。
初対面だよね?制服には苗字しか刺繍されてないのに…。
いいえ、と微笑むと1年A組までの行き方を簡単に説明してくれた。
一瞬で、私は峰岡先輩のようになりたいと思った。
後輩に優しくしたくれて、不安が全部っていうと大げさだけど、不安が少し和らいで。
そういえば、中学にも似たような人いたなぁ。
その人は生徒会長だったけど。
教室のドアをゆっくり開ける。
ざっと全員がこちらを向いた。
え!?な、なんでこっち向くの!?
小さな声で謝りながら黒板に貼られている座席表を見た。
教卓側から、
天月、稲葉、岡本、釘宮
有岡、伊野尾、加藤、斎藤
坂田、高木、中島、林、宮水
鈴木、知念、猫田、古田
望月、山田、若松
となっていた。結構、個性的な苗字が多いな。
席に行きたいけど、隣の…たぶん、有岡さんの周りに人が沢山…。
困っていると、有岡さんがこちらを見ていた。
さらに困って軽く会釈する。
周りにいたお友達さんはそれぞれ散っていった。
そして有岡さんは私に向かった頷いた。
え…、ま、まさか私のために…?
せっかく楽しそうに話していたのに悪いことを…。
謝罪の意も込めて有岡さんに向かってありがとうと言った。
カバンを置いて椅子に腰をかける。
……何、しようか。
いつもなら友達が話しかけてくれるんだけど…なんせ、知らない人たちばかりだから…(苦笑)
すると、担任の先生が入ってきた。
入学式の時、緊張しすぎて声が裏返っていた人だ。
視線が自身の注がれていることを確認すると、先生は話し始めた。
☆1時限目☆
1時間目は学活で、号令を終えて椅子に腰を下ろす。
入学式の時、先輩の対応を見て思ったけど、
ここの学校はすごく皆親切にしてくれそうだ。
このクラスも、有岡さんが優しかったし。
チラッと有岡さんを見ると、堂々と身体をこちらに向けて、頬杖をついてじっと見ていた。
や。堂々にも程があるでしょ。
首を傾げて、深く考えずに前を向いた。
黒板にはこの学校の委員会が書き出されていた。
あっ……。
総務委員と聞いて思わず手を挙げて身を乗り出した。
だ、だって、峰岡先輩が……アハハ…。
苦笑いを頬に残して何事もなかったかのように座り直した。
総務委員と書かれた隣に坂田あなたと書きたされた。
有岡……あ、大貴くん。
……うん、なんか大貴っぽい。笑
それからどんどん他の委員会も決まって行った。
そして、余った時間はゲームをしたりして終えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。