オレとは反対に世間話を深く広く知り会話のタネを肥やす事が得意な椋木は 、
他愛もない会話を途切れさせる事も無く楽しく会話する事が出来た 。
それほど楽しかったのか温かかったのかは知らないが 、
俺はいつしか寝落ちしてしまっていた 。
寝たらこうなるって分かっていたけど 、
睡魔に逆らう事が出来なかった 。
今度は三人称視点から見ているらしく 、
はっきりと部屋を見渡す事が出来る 。
俺と顔がそっくりな ____ 男はこちらに気付かない。
いや 、気付けないようになってるのか …
今までに見た時にはあの扉から男2人が入ってきた 。
無駄に豪奢な取っ手を掴み回すと 、扉が開く 。
カーテンが閉じていたあの部屋からは窺えないが 、
窓を見るととても高い所にあるのが分かる 。
窓の縁には埃がこびり付いているけど 、
基本的には綺麗みたいだ。ほら窓も____
窓に触れたはずの手がすり抜ける 。
そして胴体が、足が壁をすり抜け地面に向かって落ちていく 。
地面すれすれになると 、下に落ちる速度が落ちて 、
ソフトに地面に着地する 。
まさかとは思いつつも 、見ると
なんとも言えない … 綺麗な色の宝石の首飾りがある 。
いつの間に付けていたのか 、吃驚していると
光り出す首飾り 。
そうすると 、急に地に足が着いたような …
ここに存在する 、って感覚がしてくる 。
真っ白のコンクリの上を歩いて 、
少し人通りがある所まで来た 。
道行く人はみんな俺をまじまじと見つめる 。
やっぱり…みんな肌が黒いのに1人だけ白人なんて …
美味しそうな匂いが漂ってくる 。
随分と人通りが多い 。商店街の様だ 。
笑顔で屋台で店番をしている若い女性 。
見覚えのある顔だ 。
徐に何かを取り出す彼女と 、光り輝く…刃物を最後に、
視界は遮られた 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!