第7話

「頑張れ」はいらへん,もう頑張ってるから
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2020/05/26 14:25
「男子部戦,開始!キャプテン!」

「「よろしくお願いします」」

「全員!」

「「よろしくお願いします!」」




「まずは烏野のボール」

『サーブは11番の月島くんか…』

「あの人はどう思う?」

『あの人は,背は高いけどちょっと信頼性にはあまり良くない所がある』

「ブロックは完璧そう…でも最初のサーブはジャンプサーブって訳じゃなさそうやね」





「月島ー,サーブ行けー!」

「…ッ!」パンッ

「ナイスサーブ!」



「赤木!」

「取ったで!ツム,フォロー!」

「はーいっ」




「さぁ…誰を使う…」

「宮侑の最初のトス…」



サムが1番前に出た。

でも前には1番と3番の高身長…

次に来たのは北さん

トスのタイミングは万全やけど,ジャンプの高さが足りひんかった…

あなたやったら,こうするはずや!




「行くで,アラン君!」スパン!

「ホッ!」バンッ!




「取られた…」

「まだまだこれからだ,しっかり繋げ!」

「はい!」



「先輩のトスに間違いないのに…ちょっと今の違ったよな?」

「うん,ちゃんと考えてトス上げとったけど…」

「何か分かる,あなた?…あなた?」

『…』



あれは私の考えやった。

あのブロック,あのボールの位置

サム兄が1番最初に上がって,それにブロックが合わせた。

すると,北さんが出た

ブロックとのタイミングもズレてて,いつものツム兄なら北さんにトス上げるはず…

その更に後ろにアラさんが見えたから,私なら北さんが下がる直前にアラさんに合わせる

それをツム兄がやった。

考えが偶然重なった…?

だとしても,なんやろ…この_



「おーい,あなたー?」

『え,』

「大丈夫?」

『うん…』

「どうしたん?」

『ツム兄は今,何を考えとると思う?』

「え?」

「分からん」

「エースが分からんくて,私らに分かる訳ないやん」

『大事な試合やっとる最中で,自分のポジションはチームの中で重要となるセッターや。1番集中しやなあかん…やのに,ツム兄の頭の中に…』

「「?」」



_私がおる。






「影山サーブ!」

「影山行けぇ!」

「…ッ!」バンッ!



「上げた!」

「ナイス北さん!」

「ツム,フォロー!」

「はぁい!」



「次は誰だ…」



「キャプテン,後ろに下がって!」



「!」

「スガさん⁉︎」

「…!」



ブロックは崩される

ならば後ろに下がって,上げれるようにしろと言うことか



「へぇ…」バンッ

「よし,止めた!」

「チャンスボール!」

「影山ー!」

「俺に来ーい‼︎」



日向!

行くぞ! 



「たぁ!」バンッ!

「出た,変人速攻」











 烏野  稲荷崎
  
24 22



「マッチポイント…」

「いつも通りの一点です。頑張ってください!一点を取れば,1セット取れます!」

「それを稲荷崎が許してくれるかどうかだな」

「追い上げが来るかもしれませんね」

「しかもサーブは…」



「…」クルクル…



「宮侑」

「皆さん,なんとか上に…」


「ピーッ!」


「…」クルクル…パシッ




「来るぞ…!」

「「「…ッ」」」



「…」

「…?」

「…ツム?」

「どないしたん?」





「先輩,どうしたんだろう…」

「観客なんていないし,音は鳴ってないのに…」

「あなた…何しようとしてるんやと思う?」

『ツム…兄…』



目を瞑ったまま,此方に背を向け

静かな体育館が異様な空気に包まれる。

サム兄やアラさん達はツム兄の行動が理解出来ず

烏野達はもっと分からなかった

女子達も。

稲荷崎や烏野の女子達や,私でさえも。

とりあえず…



『(サム兄,サム兄!こっち向いてや!)』

「…!」

『(どういうことや?)』

「(俺にも分からん…)」





どないしよ…



「あなたちゃん,2人の事大好きなんやで」



この場で1番ツム兄を理解しやなあかんのは,私やのに…

シャーない,怒られるかもしれんけど…

一か八か…!





サーブは俺の中で,1番集中しやなあかん

集中が足らんかった訳じゃない。

でも,たった一言

一言だけ,聞きたい。

ホイッスルが鳴って約10秒…

これ以上迷惑かける訳にはいかんけど…

せめて,たった一言だけ…!

その一言で俺は_





『ツム兄っ‼︎』

「!」


「「「⁉︎」」」

「ちょ,エース!先輩のサーブの時は静かに_…」



『…よう,』

「!」

『よう,やったよ‼︎』

「…ニッ」



フワッ…



「来るぞ,サーブ!」


その一言で俺は,更に動く!


「ッ~!オラァッ!」



 烏野  稲荷崎 
  24 23




「おっしゃ‼︎」





「はぁ,びっくりした…」

「ふぅ…あなた,大丈夫?」


『ぁ…』フラフラ…パタンッ


「大丈夫⁉︎」

『なんか,一気に気が抜けたわ…』








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